スピードと同様に、スーパーコネクターの価値である「視点」とは、彼らがニュートラルな立場であるからこそ持ち込むことができる“外の視点”だ。
彼らは、社内のシーズやすでに描かれているビジネスの目標を超えて、「社会視点」あるいは「生活者視点」からプロジェクトのファシリテーションを行う。外の視点を持ち込むことで、同志を持つ者を結びつけることができ、企業利益にとどまらない全体ゴールを見定め、より広いナラティブを作り出すことができるのだ。
スーパーコネクター、Bert-Ola Bergstrand
では、スーパーコネクター自身が熱意を持って様々な組織に働きかけるモチベーションはどこから生まれるのだろうか。Bert-Olaに尋ねると、彼は満面の笑みで、「社会をより良くしたい、世界をもっと知りたい、ただそれだけです」と答えてくれた。
彼はその大きな目的のために、スウェーデンのイノベーション文化の推進にとどまらず、アフリカの支援やフィンランドの都市開発などにも携わっている。自らもプロジェクトを動かしているからこそ、クライアントからの相談に親身になれる。もはや彼にとって今の仕事は、職業ではなくライフスタイルなのかもしれない。
日本にスーパーコネクター的概念を取り入れるとしたら
今回の調査では、スーパーコネクターの導きにより様々な人とつながることで、スウェーデンの異なるセクターがイノベーションに向かってどのように動いているかを全体像を掴むことができた。
この国のイノベーションは、人が出会い続けることで拡大しているのだ。あまりに寛容で柔軟で迅速。思いついたらすぐやる、それを繰り返す。それは、小国ゆえ、パートナーと共にプロジェクトを進めていくことに価値を感じ、必然と考える人が多いからだろう。
果たしてその仕組みは、日本でも活かせるだろうか。例えば、組織にスーパーコネクター的な存在をアサインすることは一つの解決策となるだろう。加えて、個人レベルでも、そのマインドをインストールことで、イノベーションが加速するように思う。そのマインドとは、イノベーションは手段であるということを自覚すること。そして、企業利益の先を見据えるということだ。
案外、企業利益というのは小さな世界の話で、そこに終止すると視野が狭くなりがちだ。社会課題の解決という大きな目標を解決するために、子供から高齢者まで様々な層を巻き込んで、みんなでプロジェクトを育て、人と手を取り合って成果を出していくという姿勢を日本人はもっと持ってみても良い。Bert-Olaの情熱を目の当たりにして、そんなことを感じた。
本記事の執筆担当者 >>多々納有希
2017年博報堂入社。早稲田大学国際教養学部卒業。大学在学時、デンマーク王国コペンハーゲン大学社会科学部留学中より現地デザイン・ブランディングエージェンシーにてデザインリサーチ、戦略立案、パブリックリレーション等に従事。その経験から北欧を中心とした海外とのコラボレーションプロジェクトを手がける。そのほか、企業や国立機関のビジョンやアクション開発、インナーマネジメントやCI開発などのブランディング、新規プロジェクトの共同開発運営、イベント企画運営、未来思考型プロジェクト、イノベーション支援、都市開発などの業務に従事。
連載:スウェーデンから学ぶ「共創イノベーション」の生み出し方
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