ビジネス

2019.09.30 19:30

急成長するスウェーデンの組織が貫く「社員は25人以内」というルール

Vinn Gruopは「小規模でアジャイルであること」に信念を持つ (c)Vinn group

Vinn Gruopは「小規模でアジャイルであること」に信念を持つ (c)Vinn group

スウェーデン第2の都市ヨーテボリ市には、2008年の設立以来、年間36%という成長率で事業を拡大している企業グループがある。スウェーデン国内でもその取り組みが注目を集めている先駆的な組織形態を持つ「Vinn Group」だ。

産業技術総合研究所の人材育成事業「産総研デザインスクール」と博報堂の専門組織「博報堂ブランド・イノベーションデザイン」とが合同で行った訪問調査をもとに、スウェーデンのイノベーション・シーンをレポートする本連載。今回はこの特殊なグループについて紹介したい。

ユニークな組織形態が生み出す共創的イノベーション

Vinn Groupは、専門分野に特化した30以上のスタートアップを統合して、投資を行っている。

エネルギーマネジメント、デジタルソリューション、プロダクトデザイン、ブランディング、IoT、eコマース、ITセキュリティなど、テクノロジーを核に各々別個の専門分野に力を持つスタートアップ企業が同じスペースに居を構え、そのときどきのプロジェクトに応じてコラボレーションするのだという。最大のクライアントはボルボ・グループで、同じ建物にそのチームも入居している。

そのオフィスで象徴的なのは、階段状にしつらえられた大きなプレゼンテーション・スペースだ。階段の中にVinn Groupを構成する各会社のロゴ入りのクッションが置かれていて、グループの一体感とそれぞれの個性が同時に体感できる。ここでさまざまな企画が行われ、重要なコミュニケーションの場となっているという。



ワークスペースの環境面の配慮も行き届いており、オフィス空間は実に開放的に設計されている。どこからでも全体を一望できるような一つの大きなスペースに各社が並んで配置されていて、企業同士の垣根を感じさせない。コラボレーションを促進しようという姿勢が、空間デザインからもうかがえる。

とはいえ、企業同士はどのように統合しているのだとうか。創設者のHans Johansson氏にオフィスを案内してもらいながら話を聞いた。


創設者のHans Johansson氏

社員はそれぞれ25名まで

Vinn Groupの組織づくりの方針として、まずユニークなのは、入居するスタートアップの社員をそれぞれ25人までと厳密に規定していることだ。

Johansson氏によると、この人数規模を守ることにより、たとえば何か問題が発生した場合、即座に意思決定者と対面でコミュニケーションを取ることができ、迅速な対応が可能になるのだという。それはマネジメント面だけでなく、ソリューション開発においても同様で、ビジネスのスピードを高め、イノベーションを迅速に推進するためにはこの規模がベストだと断言する。

社員数が超えたスタートアップ企業は、その時点でVinn Groupから“卒業”となり、事業を分割して分社化し新たなスタートアップとしてグループに再加入し直したり、独自に活動を展開したりすることとなる。
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文=小島一浩

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