テクノロジー

2020.01.11 08:00

ソニーがなぜクルマを作るのか?幹部のコメントから狙いを読み解く


ソニーが自動車メーカーになる考えはない

今回のコンセプトカーでは自動運転の安心・安全だけでなく、ソニーらしい「快適なエンターテインメント」への取り組みを「VISION-S(ビジョンエス)」と名付けて、今後も推進していく。

CESの会場ではコンセプトカーに試乗して、ソニーが提案する次世代モビリティのためのエンターテインメントが体験できる。ひとつはフロント側ダッシュボードをぐるりと囲むように配置されたパノラミックスクリーンだ。自動車の走行ステータスや5G通信を活用する情報・エンターテインメントがディスプレイに表示され、画面のタッチなど直感的な操作で様々なオペレーションを実現するイメージだ。


前面ダッシュボードに広がるパノラミックスクリーン

車内では「360(サンロクマル) Reality Audio」という、ソニー独自の技術を使った立体音響エンターテインメントのサウンドが視聴できる。カーオーディオシステムによる車載対応のサラウンドシステムは特に珍しいものではないが、今後自動運転の技術が本格的な進化を遂げてきた時に、運転から解放されたドライバーによりリッチなコンテンツ体験を提供するレベルでの技術競争が繰り広げられることが現時点から予想される。

ソニーの360 Reality Audioは音源の位置をオブジェクトとして空間の中に配置して、様々な動きを付けることでよりリアルな立体感が楽しめる技術だ。現在ホームオーディオ、ポータブルオーディオ向けとしても展開を進める360 Reality Audioもパッケージにして、ソニーらしいハイグレードな車載エンターテインメントもパッケージにした、自動運転車を含む「次世代モビリティのためのプラットフォーム」をCESで披露することが、今回展示したコンセプトカーのミッションだ。


コンセプトカーはソニーが単独で開発したものではなく、大手の自動車部品、半導体メーカーのパートナーとの協業により実現している

ソニーの川西氏はグループインタビューの中で記者からの質問に対して「ソニーが自動車メーカーになる考えはない」と明快に答えている。ただ、一方ではソニーが得意とするITテクノロジーの目線から、従来にはない新しいモビリティを開発・提案できる可能性については積極的に追い求めていきたいとも話している。

コンセプトカーのデザインも今回はスポーツタイプの車両としているが、その形をいかようにでも変えられる可能性についても示唆している。ソニーらしい自由な発想が今後のモビリティ革命に一石を投じることになるのか楽しみだ。

文・写真=山本敦

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