キャリア・教育

2020.01.15 10:00

校則も定期テストもない 桜丘中学校のインクルーシブ教育が「大人たち」にもたらしたもの

Photo by milatas / Shutterstock.com


トークイベントの冒頭には、桜丘中学校の普段の様子がスライドで映し出された。職員室前の廊下には机が置かれ、教室に入りづらい子がここで勉強することも、卒業生が土日に勉強しにくることもある。家から麻雀牌を持ってきて、やりたいと言えば机をくっつけて台をつくり、やってみる。
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フリーWi-Fiにも接続できるようになっており、スマホもiPadもOK。服装も髪型も自由。定期テストも宿題もない。校則もなくした。授業中に寝る自由も、授業がつまらないと言う自由も確保されている(それは先生の授業がつまらないから)。

子どもたちがやりたいことはできる限りサポートし、やりたくないということには、それはなぜかと丁寧に耳を傾ける。頭ごなしに決めつけて従わせるのではなく、子どもたちが自ら考え、動くことを応援する。

3Dプリンターでつくりたいものをつくってみたり、ハンモックで揺られながらスマホを楽しんだりすることもできる。放課後の補習教室、放課後のボーカルレッスン、放課後の料理教室、夜の勉強教室、炎のギター教室など居場所づくりにも力を入れている。
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これらはすべて、「すべての子どもたちが3年間楽しく過ごすためにどうすればいいか」を、西郷校長や教員が真剣に考えた結果であるという。

「桜丘中では、『この学年』や『このクラス』ではなく、あの子はこうだね、この子はこうだねと個人の話をします。困っている子がひとりいれば、他にも困っている子はいるはずです。その子を観察し、意見を聞いて、その子が楽しく過ごせるにはどうすればいいかを考えて学校を見直してきました。これは教育理論先行ではなく、自然科学の方法です。自然を観察してその法則を見つけるということを教育に持ち込んでいます」(西郷校長)

「自分で考える力」を身につける

西郷校長は桜丘中学校の校長となって今年で10年になる。着任当時はどこにでもある普通の中学校だった。そこで、4つの新しいOS(Operating System)を桜丘中に導入したという。

OS1 多様性の需要・尊重/みんな違っていい。みんな違うほうがいい。
OS2 愛情を持って生徒に接する/生徒と教員が溶け込んでいるような関係性。
OS3 1人1人を大切にする/うちのクラスは、と言わない。1人1人を見る。
OS4 子どもと共に「生きる」/子どもの3年間と自分の人生の3年間を一緒に生きる。
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文=太田美由紀

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