目の前にプールが広がるゆったりしたヴィラは、日が暮れると、部屋の灯りは小さな室内灯のみとなり、自ずと就寝も早くなる。筆者のステイした3ベッドルームの2階の部屋には、真っ青な海を望むテラスもあり、自然と共生していた頃の暮らしはこういったものだったのだと、あらためて感じる。
個々のヴィラには冷房はついているが、他の共有施設で冷房を使っているのはアイスクリームが食べられるスイーツショップ、ジム、メインダイニングの厨房とワインセラーなどの限られた空間だけだ。
健康とサステナビリティが柱
そんなシックスセンシズ・コンダオのジェネラル・マネージャーは、ロサンゼルス出身のドミニク・スコールズ。9月に就任したばかりだ。
まだ38歳という若さだが、15歳で飲食業界に入ったため、サービス業界の経験は長い。ナイトクラブのアシスタント・マネージャーを経て、リゾート業界へ。つい最近まで、モルディブの超高級リゾートで働いていたが、今年訪れたカンボジアで感じたある疑問から、辞表を書いて辞めたという。
アンコール・ワット観光の拠点でもあるシェムリアップの目抜き通りで湧いたという疑問はなんなのか。
「海外の大規模資本のホテルが立ち並ぶ姿を見て、旅に本来あるべきロマンチックさとミステリアスさが失われていると感じたのです。自分も大きなブランドで働いていましたが、直接、地域やコミュニティと繋がることよりも、『ブランドらしさ』を打ち出すことに力を入れすぎていたように思えたのです」
旅を愛する1人として、もっと本質的な旅の体験を提供できる場所で働きたい。そうして巡り合ったのが、シックスセンシズだったという。
「シックスセンシズは小さなグループですが、ブランドの基準というよりも、健康とサステナビリティという柱を持ち、それぞれのリゾートで自由にゲストの体験をつくり上げていくことを推進していて、よりクリエイティブだと感じたのです」
そして、すべての情報が瞬時に世界に共有される、SNS社会ならではの選択でもあったという。
「この時代、ユニークであるというのはとても難しいことです。だからこそ、表面的ではなく、誰にもコピーできない、本質的な活動に取り組みたい。『マーケティング戦略として見える部分だけで何かをする』のではなく、真摯に1つのテーマに取り組むことが大事だと考えました」
シックスセンシズの取り組みは本格的だ。「目に見えないところもサステナブルであるべき」という考えから、2022年を目標に、グループ全体で脱プラスチックを図っている。