地域との繋がりのための活動も始まっている。現在のスタッフの比率は、島内からが65%、島外からが35%だ。これまで島外出身者はどうしても短期で辞めてしまうという問題があった。
そこで、リゾートで飲まれたワインのボトル20トンを砕いて(ガラス製のボトルは、本土で処分すると高額な処分費用がかかる)、コンクリートに混ぜ込んだリサイクル素材をつくり、それで200人分のスタッフ用宿舎を来月完成させる。そこには地元の子どもたち向けの教育施設となる建物をつくる予定だ。
リゾートのあるコンダオ島は、52ヘクタールの中に1万人が暮らし、高校までの教育システムと3つの小学校がある。ジェネラル・マネージャーのスコールズは、「30人の管理職全員が、地域の子どもたちに何か教えることに決めました。例えば、私は英語を教えていますが、絵を描くことでも、なんでもよいと伝えています」と語る。
こうして率先して地域と関わり、サステナブルで健康的な暮らしについても島民たちと一緒に考えていくのだという。
「教育は全ての始まりです。それなしには、サステナブルな生活を送ることも、健康的な暮らしもできません。私たちは環境を守り、健康なライフスタイルを送るためにもっと学ばなくてはなりません。私の唯一の期待は、私たちの教育によって、次世代を担う子どもたちが情報を得たうえでの決断を下せるようになることです。我々が教えた子供達の誰かが、このリゾートの未来のジェネラル・マネージャーとなって、戻ってきてくれることを願っています」
さらに、「サステナブル・ファンド」と名付け、総売り上げの0.5%を地元へ還元することにしている。例えば、オートバイや自転車が島の主な移動手段だが、親がヘルメットをしていても、子どもはしていないことが多い。なので、最近、650個の子供用ヘルメットを島内3つの小学校にプレゼントした。
サステナブルマネージャーのグエン。手に持っているのは小学校に寄贈したヘルメット
リゾートそのものが有機的な生物
これらの支援が一方通行的なものではなく、「サステナブル」なものであるためには、地元の人たちの自立を促すことも大切だ。
前出のグエンは、新たな基金の設立も考えている。「センス・オブ・ホープ・ファンド」と名付け、地域の学校の子供たちにハンドクラフトを教えて、リゾート内のブティックで販売し、収益で学用品や教師の給料などに充てる考えだという。
「仕事としても個人的にも、この地域に根を下ろしている感覚が大好きです。もし、私たちがユニークであるためだけに、他のリゾートと異なることをしていこうと思うなら、いつか行き詰まります。私たちが自分たちの価値である、サステナビリティと健康に忠実であり続けるなら、常に成長の余地があるはずです。いま私たちがより良くなるために、できることがある。それはとてもクリエイティブなことなのです」
このようにスコールズは語るが、それまでサステナビリティに興味がなく、「たまたま」ここにやってきた人にも、サステナビリティと健康な生活について、何かを感じてもらえればと願っている。
控えめな照明で、自然との一体感が感じられる
「私は、リゾートでの仕事は、文化とアイデアを結ぶ橋となり、誤解を取り除くものだと信じています。人々が旅に出るとき、新しいアイデアや理解と出合います。自分の考え方を変えない人でも、私たちが相互理解を築き、会話をすれば変わるかもしれません。そう信じています」
スコールズの話を聞くうちに、まるでリゾートそのものが、1つの有機的な生物のように感じられてきた。それが、「地域に根ざし、共生する」リゾートのあり方であり、簡単に模倣することができない「本質的なユニークさ」につながっていくにちがいない。