ベトナムの離島リゾートが実践する「見せかけじゃないサステナブル」

ベトナム最東南部の離島にある「シックスセンシズ・コンダオ」


シックスセンシズ・コンダオのメインダイニングの厨房を預かるイギリス出身のダニエル・ウッドブリッジ エグゼクティブシェフは、「調理法も変えて行く必要があります」と語る。


ダニエル・ウッドブリッジ

現在、真空低温調理をしている料理があるが、この調理法にはプラスチック製のバッグが必須のため、ガスや炭焼きなどに切り替える。

ルームサービスなどで料理を運ぶ際には、ラップの代わりにベトナムの伝統的な竹細工のカバーを使い、食材などを一時的に保管するケースはガラス製に置き換えられる予定で、つい最近発注を終えたばかりだ。業者からプラスチックで包装された食材が届いても受け取らないほどの徹底ぶりは、なかなか他のリゾートにはない。


竹で編んだ食事用のカバーを見せるウッドブリッジ

食材は、なるべく地元のものを使い、島でとれるものが60%。ホーチミンシティーから飛行機で45分、海に囲まれた離島だけに、魚介類には事欠かない。

「冷蔵庫に保管してあるものを取り出して使うというような料理は出しませんよ」とウッドブリッジは笑う。リゾート内に住む彼は、厨房が忙しくなければ朝食会場にも顔を出し、ゲストに今夜は何が食べたいかを訊いて回る。それに応じて毎日仕入れを行うため、当然ながら食材のロスは少ない。

ターメリックとニョクマム(魚醤)に漬け込んだ地元産の魚「レインボートラウト(日本のマスとは違い、鯛のような白身魚)」のバナナリーフ包み焼きや、甘味の強い島で取れた蟹は、唐辛子と胡椒でスパイシーに味付けをして提供する。



「島でつくっていないものは、ベトナム本土から買っています。質が良いから、満足していますよ。ベトナム産でないのは、バターくらいですね」と言う。

また、レストランなどで出た食べ残しは、リゾートの敷地と隣り合わせにある、ベトナム軍国境警備隊が養豚用に引き取り、そこで育った豚をリゾートが購入し、従業員用食堂などで提供するというサイクルも確立している。

サステナブルマネージャーで、ハノイ出身のエミー・グエンは、ダナンにある農業コンサルタント会社のグリーン・ラブスで4年半働いた後、ベトナム中部のリゾートで、地元の農家にオーガニックな野菜づくりを教えるなどした後、先月、このシックスセンシズにやってきた。

食材の切れ端や植栽を刈り込んだ際に出た木の枝などを使ったコンポスト(堆肥)で、砂が多い土壌を肥沃なものに改良していくのだという。

現在、リゾートでは、茎をサステナブルなストローとして使うレモングラス、ベトナム料理のアクセントに欠かせない唐辛子、ベトナム・コリアンダー、マスタードリーフなどの15種類のハーブや野菜が育ち、マッシュルームの栽培小屋もある。近く、卵を取るための鶏小屋も設置する予定だ。
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文・写真=仲山今日子

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