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2019.12.15 12:30

鹿児島と芋焼酎 切っても切り離せない「土」の関係

旅に行くと、その地域の名産を見たい、食べたいと多くの方が思われるでしょう。しかし、賑やかなプロモーションがされていたり、都会で流行っているものが蔓延している現状では、本物を見出すことはなかなか難しいのではないでしょうか。

本連載「旅する“元”広報」では、「土」から見出した本質的な地域魅力を、旅産業で長らく広報をしていた経験を生かしてご紹介していきます。第一回は鹿児島県の芋焼酎。しかしまず、なぜ「土」に着目するようになったのか。その、きっかけからお話したいと思います。

同じスペインであっても、同じでない

それは、2014年にスペイン700キロを徒歩で横断した時のことでした。黙々と歩く毎日の中、カラカラに乾いた砂漠地帯を抜け、雨ばかり降っていてぬかるんだ山中に入り……大小様々な村を通過しました。そして、環境の違いを体感して、スペイン人の暮らしは「同じスペインであっても、同じではない」ことに気がつきました。

スペイン中部にあるリオハ地域は砂漠地帯です。そこでは小粒ではあるものの乾燥に強く、味が凝縮された葡萄が育てられ、濃密なワインが造られていました。他にある産業といえば、少ない草でも生育ができる羊をメインとした畜産。ここでの数日間は、濃厚な赤ワインとラムチョップを堪能しました。

スペインのワイン畑

ゴール付近は海が近く、雨が多いガリシア地域。そこには青々とした葡萄畑のほか、多くの草を必要とする乳牛がいました。水分の多い葡萄から造られるワインは酸味があって爽やか。牛乳の加工品であるチーズとフレッシュな白ワイン、それに海産物の食事を満喫したものでした。

川沿いを歩き、川幅が広くなれば、やがて都市にでるのがわかります。それは水路を使って物資を輸送できるために商売が盛んになり、人が集まるから。インダス文明などの成立ちを鑑みても、川と都市との密接な関係性についてはイメージできると思います。

人間の生活の源は、そこで生活する人たちの足元にある「土」と大いに関係がある。それだけではなく、海が近いか、山が近いかなどの「地形」も生活を左右します。もちろん、恵まれない土地で不可能を可能にしてきた先人の叡智(歴史)も見過ごせません。

こうして俯瞰すると、いわゆる“マリアージュ”と言われる食べ物の組み合わせの妙も、「土」を介した、いたってシンプルでプリミティブな理由があることがわかると思います。

私が地域をリサーチする時は、ガイドブックからは入りません。まず「土」をみてから高い場所に登り「地形」を見る。そして資料館や詳しい人に「歴史」を訪ねる。この3つを本質的な地域魅力を見出す視点と捉え、好奇心の赴くままに、全国を旅しています。

他にはない鹿児島の「土」

さて、本題の鹿児島県の芋焼酎の話に入りましょう。

鹿児島に空路から入る場合は、ぜひ、上空から空港周辺を見下ろしていただければと思います。そうすると、大地から霜柱のようにそそり立った平らな台地を見ることができます。この霜柱のようなものは「シラス」。鹿児島県はこのシラスが最大で150mも堆積したものから成り立っており、なんと県全体の52%を占めているのです。

霧島市の地層・シラス
霧島市を車で走ると、このような地層が見える。白いのがシラスの層
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文=南雲朋美

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