「“魂”を進化させるとあなたはもっと輝く」
東証一部上場企業のCEOが上梓する書籍のメッセージとしては、異色と言ってもよいだろう。アカツキCEOの塩田元規氏の初めての書籍となる「ハートドリブン」には、論理や理性だらけのビジネスの世界で、情緒や感情を起点とする、新しい経営のあり方が提示されている。
不確実性の高い時代だからこそ、外側に目を向けて変化に流されるのではなく、自身の内側に目を向け、そこを進化させていくべきではないか──。
この価値観がきっと、次代の経営の新たな基準になる。そう思い、Forbes JAPANでは、塩田氏が「いま語り合いたい」と熱望した5名との連続対談をスタートさせている。
第2弾は、塩田氏が新卒入社したDeNAの創業者・南場智子氏だ。DeNAを退職し、アカツキを起業した今でも定期的に会って話すという2人。塩田氏にとって恩師とも言える南場氏は、彼の著書を読んでどのような感想を持ったのだろうか?
対談を進めていくなかで塩田と南場がともに切り込むことになったのは、ハートドリブンへと大きく舵を切ることになった背景だった──。
「空っぽな自分」から気づいた、ハートドリブンという考え
塩田元規氏(以下、塩田氏):南場さんは、僕の本が出版されて、すぐに何冊か買ってくださっていましたよね。感想も、すぐにチャットで送ってくれました。だからこそ、今日は「ハートドリブン」という考え方について、南場さんが感じたことを率直に聞きたいです。
南場智子氏(以下、南場氏):本を読んでみて最初に感じたのは「よく書いたな」ということですね。日本には「自分に厳しく、他人に優しくあれ」という考えが深く根ざしています。そこへ、自分の感情を丁寧に扱い、「もっと自分らしくいていい」と塩田くんは発信した。あと、こういったメッセージを発信するには、けっこう勇気が必要だったんじゃないかと思うんです。
塩田氏:勇気ですか?
南場氏:私は新卒だった頃の塩田くんを知っています。当時から真面目だったし、何に対してもストイックでした。そして「完璧でなければならない」という意思も強かった。
誰しもが「完璧な人間」になるためにさまざまな過程を歩みますが、多くの人は完璧ではないゆえに「そんなことを言って本当に大丈夫だろうか?」などの迷いが生じます。塩田くんはその迷いを振り切っていたこともあり、この本を手にとって、塩田くんが自分らしく頑張っているんだなと感じましたね。