岡山の再生ベンチャー。耕作放棄地から美しいワイナリーができるまで。

ワイナリーを象徴するモダンな建物は、ブドウ畑を見渡す絶好のロケーションにあり、醸造場やセラー、カフェなどの機能を持つ。

「岡山に美しいワイナリーができたらしい」。2016年岡山県新見市哲多町の山あいに誕生したdomaine tettaの噂はワイン愛好家のみでなく、デザイン業界に広がり、話題となった。

それもそのはず、建物の建築デザインディレクション・インテリアデザインは、世界的に活躍するインテリアデザイナー Wonderwall片山正通。ワイナリーの中にはギャラリーのように現代アートが飾られる。ワインのラベルには国内外で活躍するアートディレクター平林奈緒美が遊び心あるデザインを配する。日本トップレベルのクリエーションが集結したワイナリーである。

だがしかし、このワイナリーがあるのは岡山空港から車で1時間半。岡山県内の人もそう多くは訪れない山あいの独立系ワイナリーに、いかにしてこの理想郷のようなワイナリーを完成させたのか。そこには新見市出身の創設者、高橋竜太による情熱があった。


domaine tetta創業者の高橋竜太。ワイナリーの経営とプロモーションを担う。

耕作放棄地から始まった再生ベンチャー

「晴れの国・おかやま」と言われる通り、日照時間が長く、ブドウ作りに適した土地として知られる岡山。しかし、地方の農村の厳しさは推して測る通りであり、このエリア一体もいつしか耕作放棄地となっていた。

「昔はぶどう畑が広がっていた場所が雑木林になってしまっている。ブドウの栽培にこれだけ向いている土地なのだから、もっと活用できるはず」。そうした想いから創業者である高橋は10ヘクタール、およそ東京ドーム2個分という土地を2009年に受け持つことになる。

「地元に貢献したい気持ちもありましたが、それ以上に必死でしたね。すでに土地を手にいれてしまったので、進めなければと。自分自身への挑戦でした」(高橋、以下コメント同)

理想とするワイナリーを求める中、地方では規格外ブドウで“お土産ワイン”を作るようなワイナリーはあっても、見に来てもらえるワイナリーは少ないことを感じる。そうした中でもワイナリーステイを始めた新潟の「カーブドッチ・ワイナリー」など、旅の目的地となるようなワイナリーの登場を見ることで、「見せるワイナリー」を作るという、自らの方向性が見えてきた。


美しく再生されたブドウ畑。生食用のブドウを含め、約30品種を育てる。

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文=児島麻理子 写真=中川正子

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