原材料の可能性を最大限にいかしたワインを作る
そのデザイン性が注目されがちなdomaine tettaだが、真骨頂はワイン造りへの誠実な向き合い方だ。ドメーヌの名の通り、ぶどうの栽培から醸造、熟成、瓶詰めまでを自らの手で行う。決めているのは、原材料の持つ力を信じて、なるべく手を加えずにワインを作るということ。畑はできるだけ土をいじらず減農薬で、酵母も野生酵母を使用する。また3万本という本数を生産しながら状態を安定させるための亜硫酸添加は最小限にしている。tettaのワインには抜栓後一カ月掛けて飲んでも美味しい、と記されているものもある。これはひとえにブドウや酵母のポテンシャルの高さによるものだ。
「20名というスタッフを抱えながら、亜硫酸を限りなくゼロに近づけるというのは、本来はリスクでしかないです。ですが、素材の良さを生かした良いものをみなさんに飲み続けて欲しいという想いがあります。自分たちのブドウの力を信じていますし、優秀なスタッフの能力を信じています。実際これまでなんとかなっているんですよ」と高橋は朗らかに笑う。
良質な石灰質の土壌からはミネラル感あるワインができる。生食ブドウを出荷もするdomaine tettaでは、そのブドウもワインに生かしフレッシュな味わいを作り上げている。
「現在はワイナリーの引き出しを作っているところ。これから10年、20年先も継続してワインを作っていくことを目標としています」
現在は研修生も積極的に受け入れており、研修を終えたスタッフが新見に新たなワイナリーを作るなど、domaine tettaからの輪が広がっている。現在、岡山では7社のワイナリーがあり、「ラ・グランド・コリーヌ・ジャポン」が地元の若手筆頭農家の方と組んでワインをリリースするなど、プレイヤーも増えてきた。呼応するように、岡山市内にもワインの良さを伝えていくワインバーやレストランが現れている。
「ワインを媒介に哲多町に人々が集い、チャレンジがうまれる場所になったらいい」と語る高橋の言葉通り、いま岡山の小さなワイナリーの挑戦が地域へのインパクトを与え始めている。