100年後にも残るカクテルを生み出すために。1杯にかける次世代バーテンダーの挑戦

「バカルディレガシー カクテル コンペティション 2020 世界大会」への出場者を決める前哨戦となる日本大会セミファイナル


レガシーでのカクテルパフォーマンスは6分間。審査のポイントは、カクテル名、インスピレーション、独創性、再現性、見た目、香り、味、ステージパフォーマンスと技術となる。後世に残すカクテルとしてなぜふさわしいか。大会のプレゼンテーションでは、自分語りが大切になる。



あるバーテンダーは、過去にレガシーで優勝したバーテンダーについての新聞記事を見て、自分もバーテンダーを目指し、いまは彼のお店で働くことができているという。「夢は叶えていく楽しさがある」、そこにかけてランナーズハイならぬ「Dreamers High」というカクテルを作った。

またあるバーテンダーは、「芸術作品は誘惑的でなければならない」というガウディの言葉を軸に、自らが尊敬する4人のアーティストのイメージに合わせたスピリッツやリキュールを合わせ、魅惑的なカクテルを創造した。

挑むのは若手のみではない。45歳からバーテンダーを目指し、今回大会に出場した男性は、バカルディの創業者が48歳からラム作りを始めたことを知り、そこに自分を重ね合わせて出場を決めた。

コンペティションの面白さは、カクテルのトレンドも見れるところにもある。時代の流れから、サステナブルはひとつのテーマとなっている。バーでは廃棄されがちな卵黄を主役にしたものや、卵白のかわりにアクアファーバ(豆の茹で汁)を代用するもの、ライム・レモンの代わりにビターズを使用する、またプラスチックのストローを刺さないこともスタンダードになりつつある。

一方、ポートワインやシェリーなど味わいをしっかりさせ、アルコールを感じられるカクテルというのも流れのひとつとして出てきている。

カクテルの技術だけでなく、自らのアイデンティティを語り、世相も反映してカクテルに落とし込む、そうした総合能力が次世代のバーテンダーに求められているのだ。

2008年より開催されている世界大会に対し、日本から進出するための日本大会が始まり5年、バーテンダーの表現力は年々上がり、出場者の実力も僅差であることを感じるが、接戦の中、今年も日本代表を決める決勝に挑むファイナリスト5名が決定した。
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文=児島麻理子

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