100年後にも残るカクテルを生み出すために。1杯にかける次世代バーテンダーの挑戦

「バカルディレガシー カクテル コンペティション 2020 世界大会」への出場者を決める前哨戦となる日本大会セミファイナル

「Your time starts now」の掛け声とともに、会場の緊張が一気に高まる。バーテンダーの手元は大型スクリーンに映し出され、自らのカクテルのプレゼンテーションが始まる。その声は堂々としているが、カクテルを作る手元は小さく震えていることもある。

世界最大級のカクテルコンペティション「バカルディ レガシー カクテル コンペティション 日本大会」(以下、レガシー)でのひとコマだ。緊張するのもそのはず、優勝すると世界から注目が集まり、国内外で活躍する道が開けることから、1日で人生が変わる可能性のある大会である。



レガシーはこれまで多くのバーテンダーをスターダムに押し上げてきた存在として知られているが、それは、この大会が表現者としてのバーテンダーを求めていることが大きい。

近年バーテンダーの仕事は、お酒を提供するホスピタリティの仕事にとどまらず、店舗のプロデュースやメニュー開発、異業種とのコラボレーションにまでおよび、なかにはスニーカーの特別モデルの依頼を受けるなど、次世代のスターとしての注目を受けることもある。

そうした活躍を後押ししているのが、バーテンダーに光を当てるコンペティションの存在だ。

なかでもバーテンダーがレガシーに魅了されるのは、大会の目的がモヒートやダイキリなどに次ぐ、次世代の定番カクテルを見つけ出すことであること。大会に出るバーテンダーは自らの名を上げていくことも目的ではあるが、後世に自分のカクテルを残し、カクテル文化に貢献することにも想いを寄せている。

1896年にキューバの「ダイキリ」鉱山で働いていたアメリカ人ジェニングス・コックスによりレシピができたとされるダイキリ、また、第二次キューバ独立戦争の合言葉として使われた「Viva Cuba Libre(キューバの自由万歳)」という言葉から生まれた独立を祝すためのカクテル「キューバリブレ」。

近年では、アメリカ代表としてレガシーに出場し、2012年に世界優勝した後閑信吾氏が、カクテル「Speak low」と同名のバーを上海に開いたこともあり、バー業界では知らない者はいないカクテルとなった。

さまざまな想いや出来事がカクテルに形を変えて、後世に残っていく。バーテンダーとして仕事をしているからには、カクテルの歴史に名を刻みたい──。そこにかけるバーテンダーの思いはひたむきだ。
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文=児島麻理子

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