いずれは低所得者向け住宅ユニットへと成長させるのが目標だ。ある真夜中過ぎに突然、彼はランボルギーニに私を乗せて案内してくれた。大音量でバッハをかけながら車を飛ばし、約15分後、森の中のバンガローに着く。
中では4人のチームがアップルのラップトップを叩いている。投資候補者とのサンフランシスコでの面会を翌日に控えている。彼らのまわりの壁には、メモやスケッチが貼られている。ウェストは彼らの肩越しに覗き込み、フォントを変えるように、あるいは画像を明るくするように、指示を出す。
30分ほど経ったころ、ウェストはプレゼンテーションの出来栄えに満足して現れ、私を裏口のドアへ促す。私たちはひんやりとした、星のない夜空のもとに出る。私は彼のあとについて土の道を森の奥へと歩く。数分後、彼は開けたところで立ち止まり、言葉もなく前方に目を向ける。
そこには、遠くにぼんやりと、巨大で重そうな3つの構造物が立っていて、木造の宇宙船の骨格のように見える。彼のアイデアを形にしたプロトタイプで、いずれもドーム形をしており、高さは数十フィート。ウェストはそれぞれの中に私を案内する。
彼いわく、それらはホームレスの住居として使用可能で、地中に埋め込んで頂上部から採光するかもしれないという。私たちは何も言わずにそこに数分間立ったまま構造に思いを巡らし、それからひっそりと待つランボルギーニに乗り込んだ(※訳注:本記事の掲載後、このプロトタイプについてロサンゼルス郡から取り壊しの命令が出ている)。
希少性のビジネスモデル
ランボルギーニにインスパイアされたスニーカーをつくっている会社にしては、Yeezyの本部は驚くほど地味だ。ずんぐりとした青とグレーのビルディングは、カリフォルニア州カラバサスのメインストリート近くにある。
サンフランシスコから戻ってきたウェストに会うと、彼は投資家との面会のことを話題にさえせず、もう別の何か巨大なものに向かっている。オフィスの裏の駐車場に、同心円状に並べられているのは、アディダスでウェストがこれまでにつくってきた全作品だ。スニーカーの試作品のコレクションが真昼の日差しに焼かれている。