ビジネス

2019.11.28

エンジニアもデザイナーも。多様な人材で「新ビジネス」を作るコツ

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またBCGDVでは、クライアントの人材に対しても、「このような人が欲しい」と具体的にリクエストをします。大企業側に求める人材について、平井氏は「ポジティブな人、ヒエラルキーがない環境で動ける人、社内経験が長く社内にネットワークを持つ人、調整能力が高い人など、BCGDV側にはない、クライアントの人間だからこその価値を出せる人」と話します。

そのためには、必要に応じてクライアント先でも面接したり、どうしても合わないと思うときは、たとえクライアントであってもチームから抜けてもらうことも。「過去数回、この人では絶対にダメだと感じたケースでは、その旨を企業側にストレートに伝えた」と、実例もあります。

なぜなら、「ジョイントベンチャーとしてビジネスを立ち上げる」という目的があるからです。その達成の障害となるものはフラットに取り除く。大きなビジネスを創り出すキモは、やはり人にあるということです。

ケミストリーを意識してチームを組む

一般的な大企業では、人事異動を個人がコントロールすることは難しく、集まったメンバーでなんとかプロジェクトを前に進めていくことが多いですが、BCGDVでは、「メンバー同士、そしてメンバー自身とプロジェクトのタイプの相性(ケミストリー)をかなり考慮して」チームを組んでいるのも特徴です。

例えば、「AはうまくいっているときはCとやれるが、状況が厳しくなるとCのダメだしについていけなくなる。だからこのプロジェクトでは組ませない」や、「Aは今の役割でない方が生き生き楽しく仕事ができる」など、色々な角度から効果的な組み合わせを探るのです。そこには、どんなに優秀な人材を集めても、いつ誰とでもうまくいくものではないということを前提があります。

BCGDVが100以上のビジネスを立ち上げてきた背景には、さらに、「戦略立案から実行までのステージに全員が参加し、それぞれのプロフェッショナルなスキルをコアにしつつ、意図的に互いに少しずつ仕事がかぶるようにプロセスを組む」という秘訣もあります。

大企業における事業開発の成功率は5%程度だとされており、実際、私自身もGEで事業開発を担当していたときは、年数件の新規事業を成立させるために数百のプロジェクトを走らせていました。そして、それにかかわるメンバーは平井氏の言葉と同じく、「プロセスの最初から最後までを経験する」ように教えられました。それを何度も積み重ねることで他の人の気持ちがわかるようになるからです。

プロフェッショナルな領域は各自に任せつつも、メンバーがどんなことをしているのか学ぶ機会を与え、各々がその学びから成長していく。BCGDVはその流れを、極めて組織的に作り出しています。

もう一つ、BCGDVのマネジメントは「個人の情熱」の部分にも工夫があります。BCGDVでは、自分で作ったビジネスに出向するのではなく移籍をします。プロジェクト終了とともに、片道切符で生み出したジョイントベンチャーで新たなスタートを切る。だからこそ、自分の未来を賭けて、プロジェクトを推進する力が自ずと培われていくのでしょう。

連載:「グローバル思考」の伸ばし方
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文=秋山ゆかり

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