こうした問題は、改善されるどころかむしろ悪化しているようだ。経済協力開発機構(OECD)と欧州連合知的財産庁(EUIPO)が2019年3月に公表した報告書の試算によると、国際的に取引されている偽造品・海賊版は、世界全体の貿易額の3.3%を占めており、その額は5090億ドルに上る。2013年は、世界貿易全体に占める偽造品の割合は2.5%で、金額は4610億ドルだった。
こうした問題に取り組むブランドのオーナーや小売店、警察に、テクノロジーが助けの手を差し伸べられるかもしれない。ブロックチェーンによる偽造品対策ソリューション「ブロック・ベリファイ(Blockverify)」や、模倣品検知システム「シフェム(Cypheme)」、ブランド保護プラットフォーム「レッドポイント(Red Points)」などはどれも、偽造品を検知して、消費者の手に渡るのを防ぐソリューションだ。
ニューヨークを拠点とする「エントルピー(Entrupy)」は、製品が本物かどうかを1分未満で鑑定できるシステムを開発。その精度は99%以上だという。
エントルピーは2018年、高級品およそ5000万ドル分を鑑定し、590万ドル分の偽物と思しき製品を発見した。鑑定対象となったのは、バレンシアガやバーバリー、シャネルなど、さまざまなブランド製品だ。
この結果は、市場で販売されている最高級ブランド品には、偽物が10%以上含まれている可能性があることを示している。その割合は、小売市場全体から見ればわずかとはいえ、偽造品問題がどれほどの規模を持つかをうかがわせるものだ。
エントルピーの共同創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるヴィデュース・スリニヴァサン(Vidyuth Srinivasan)は、「偽造品問題は巨大な地下経済であり、社会的・経済的・政治的な大問題につながる」と話す。
「この問題は至るところに存在し、食料品でさえ偽造されている。偽物の卵に、偽物の粉ミルクや米。プラスチックでできた米が本物として販売されている。米を炊いて溶け始めたのを見るまで、そうとは気がつかない」