その「仕事」については、近年、働き方改革で勤務時間短縮やリモートワークが推進され、少しずつ機運が変わってきている。一部の企業や有識者はの間では、「仕事」を軸にするのではなく、「生活」を改善することで仕事を好転させようという動きもある。
では、食や睡眠にまつわる問題は、企業がケアすべきなのか? または個人でも、お金をかければどうにかなるのだろうか? それとも……?
ニースと東京を行き来する「食人」松嶋啓介と睡眠スタートアップ「ニューロスペース」CEOの小林孝徳による食と睡眠対談(全3回)。quantumと博報堂でクリエイティブディレクターを務める原田 朋のモデレートのもと、第2回はできそうでできない「自己管理」について。
原田:人材不足が叫ばれる中、これからは従業員のライフスタイルをケアする企業にいい人材が集まっていくように思います。実際、そのことに気づき始めている経営者も出てきていますね。
松嶋:でも、家庭で考えなくなったから社長が考えるって変な話ですよね。プロが働く場所なのにプロのコンディションを作ってこないなんて。ある程度は会社が追い込んでいる面もあるかもしれないですが、それは会社がやるべきことなのか?
もしスポーツ選手だったら、自分でコンディション作れなかったら即クビですよ。いくらたくさん練習しても、本番で結果を出せなかったら意味がない。だからコンディションが大事。ビジネスパーソンも同じです。お金をもらって働いているプロなのだから、自己管理もできずにビジネスパーソンなんて言っちゃいけない。甘えですね。
小林:スポーツ選手は個を求められるが、日本の企業は個を大事にするよりも、企業に従わせることを大事にしている気がする。睡眠を犠牲にさせたり、ストレスをかけたり、自由をなくしたり、思考をさせないようにしたり……。
そのサイクルの中で十分な睡眠を取れないから、脳が変容し、扁桃体という部分が過剰反応して怒りっぽくなる。責任転嫁やイライラが増えて人間関係が悪くなる。そうして苦しんでいる中で、少しでも自分の承認欲求を満たすために「自分は寝なくても平気な人」アピールをするような、歪んだ仕組みになってきている。
食と睡眠が変わると、思考が変わり、行動が変わり、人格まで変わってしまう。でも日本はその辺りのケアが海外と比べて遅れていますよね。
松嶋:そういえば、奥さんに「味噌汁おいしいね」と言うようになってから何か変わりました?
小林:変わりました笑。僕は6年前、26歳のときに起業したんですけど、当時はひとりぐらしで、ストレスの発散方法といえばペヤングソース焼きそばや甘いもの、ユーチューブぐらいしかなかったんです。
それが結婚して変わりました。「食」って質素でも誰か人と食べるとおいしいし、特別な時間が流れる。いまはすごく幸福感を感じていて、何を食べるかも重要だけど、誰と食べるかも重要な気がしてます。
原田:僕も単身赴任していた時は、睡眠時間など「量」は気にしていたし、食事も炭水化物とか野菜とか栄養素みたいなレベルでは気にしていましたが、食べたものが脳や気持ちにどう影響するかまで考えたことがなかったです。
松嶋さんは最近「おちつかせる食事」についてお話しされていますが、ビジネスパーソンはどんなことに気をつければいいでしょう?