ビジネス

2019.10.31

言語や文化を越えて、繋がり合う。リバプールと日ハムが考える「スポーツビジネスの可能性」

パートナーシップ契約発表を終えたばかりの試合で表示された日本ハムの広告 @リバプール

前編に続き、後編でも日本ハム執行役員 スポーツコミュニティ部 部長の前田啓次氏、そしてフェンウェイ スポーツ マネージメント(FSM)のアジア事業戦略担当兼広報の吉村幹生氏に今回のパートナーシップで予定されている今後の活動について話を聞いた。

日本ハムは理想的なブランドだった

──現在中国や東南アジアの企業とスポンサーを組む欧州クラブが増えている中、リバプールFCはなぜ、日本企業とパートナーシップを組んだのでしょうか。

吉村:私達は日本だから、中国だからという国ごとに考えることは一切ありません。もちろんリバプールFCはイギリス、そしてリバプール市内に拠点を置いたチームですので、地元を支えないといけないという考えはあります。一方で、私たちのブランドは海外の非常に多くの方々に愛され、楽しんで頂いています。

では、日本ハムさんと組むことが私達にとってどういう事なのか。1つは、そもそものビジネスですよね。私達は日本ハムさんが日系企業だからアプローチしたのではなく、日本ハムさんが持っている「価値」が私達にとって意味があり、そして我々の持つ価値が、日本ハムさんのニーズに対して意味があると信じることが出来たので、一緒にお仕事をしたいと思ったのです。

日本ハムさんは海外で食肉生産を展開されていますが、加工食品はまだ日本での事業が中心となっておられます。この分野の海外展開拡大を目指す日本ハムさんが、私達リバプールFCの価値を活用することでどのような効果が得られるのか。「東南アジア、または海外で事業を広げていきたい」と考える他の日本企業さんにとっても、参考になる可能性を秘めています。

──実際にリバプールFC内での反応はいかがでしたか?

吉村: 社内の反応は、言うまでもなく素晴らしかったです。我々は、それぞれの業界をリードする素晴らしいブランドと仕事をご一緒出来ることを常に模索しています。その点において、日本ハムさんはまさに理想のブランドです。

我々はスポーツの持つ力を通して、地元や海外の地域においてポジティブな影響をもたらすこと、そして、パートナー企業の持つ価値と我々が持つ価値の間に生まれる素晴らしい価値のバランスを、一緒に創り上げることが出来ると信じています。

畑社長にお越し頂いた際には、選手たちのクラブハウスにも案内しました。そこではクラブハウス付きのシェフが熟成肉を使っていることを話したり、チーム付きのシェフが「和牛に関してもっと詳しく話を聞きたい」と言ったりした事で、いずれアンフィールドのクラブハウス内で日本ハム製品が提供される可能性も出てきました。


@リバプール

これは最初からあった話ではなく、私たちスタッフの間で日本ハムさんの認知度が高まってきたことによって起きたことです。まさに、パートナーシップの形(価値)が拡大している証拠です。これらはぜひ早い段階で実現出来ればと思っています。

実はこのような施設の案内役を務めさせて頂いたのは、リバプールFCのレジェンド(OB)であるロビー・ファウラー氏でした。彼は、当日が自身の誕生日であるにも関わらず、その役を買って出てくれたのです。クラブの顔であるレジェンドが直々に一緒に案内をしてくれたことで、より絆が深まったかと思います。

前田:現地では、ファウラー氏の帯同により、充実した練習施設やフードバンク施設を視察させていただきました。ファウラー氏と和牛の話で盛り上がり、お礼としてすぐにサンプルを送りました。チームシェフにも試食の機会を設け、今は実際にチーム側と納品に向けた話をしている段階です。選手が和牛やニッポンハムグループの商品を食して試合で活躍したり、サポーターが食べながら観戦を楽しんだりする姿を、ぜひ見てみたいものです。
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文=新川諒

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