避難所はまず「快適」であるべき。スフィア基準がもたらす明日への希望

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避難における快適とは何か。何でも手に入る環境、そういうことではない。ストレスを軽減し、尊厳ある生活の回復を促す環境のことだ。

災害に合われた方々にストレスなく快適に過ごしてもらうための世界的な基準、スフィア基準といわれるものが存在する。

〈スフィア基準〉とは
1998年に人道憲章と人道対応に関する最低基準(Humanitarian Charter and Minimum Standards in Humanitarian Response)、通称スフィア基準。「人道憲章、権利保護の原則、コア基準」の3つの共通の土台と、生命保護のために必要不可欠な4つの要素、1給水、衛生、衛生促進、2食糧の確保と栄養、3シェルター、居留地、ノン・フードアイテム(非食糧物資)、4保健活動 これら各分野における最低基準を定めている。例えば、1人あたりの居住空間は最低3.5平方メートル、便所は20人に1基、男性1対女性3の割合で設置、など。

これは複数のNGOと赤十字、赤新月運動によって作られた。1994年、アフリカ難民キャンプで多くの人が死亡したことがきっかけだ。人が生きるために、人らしく生活できるために、最低限のルールとして設けられる基準だ。

この基準は生活の一切を微に細に渡り示す。1日に必要な水の量(飲料と調理用は別に分けて考える)、水源に並ぶ時間は30分未満、トイレ、洗面所の数、一人当たりの石鹸の量、おむつ、生理用品の数に至るまで、まるで小さな町の都市設計を思わせる。加えて、施設全体を管理するモニタリングの仕組み、職員の待遇にまでおよぶ内容となっている。

興味深い点は、基準が刷新される際に、社会情勢も反映されていること。例えば、2018年版のスフィアハンドブックによれば、ジェンダーに関する考え方として、「ジェンダーとは男女の生涯を通じて、社会的に形づくられた違いである。この違いは時代とともに、または、文化や状況によって変化する可能性がある」(抜粋)とし、加えて、「人道支援の各段階にて、LGBTQI の人びとと支援組織との建設的な対話を常に行うべきである」(同抜粋)とある。

まず人が快適に生きること、当たり前のこととして必要なすべてのことがスフィア基準にはある。
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文=坂元こうじ

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