──不妊治療に対しては、どういうイメージをお持ちでしたか。
細川:不妊治療のイメージは重かったですね。この話をもらったのがちょうど40歳くらいのときだったんですが、自分に近い年代の、取材で会った女性が、実は不妊治療をしていることをすごい言いづらそうにしていたんです。今度こういう映画やるんだけどちょっと話聞かせてもらうことはできませんか?って遠慮しながら言ったら、難しいって何人かに断られたんですよね。
不妊治療がうまくいかなかった人が多くて、思い出したくないと言うし、やっぱりちょっと自分も突っ込めませんでした。重く描こうと思ったら、いくらでも重くなる題材だなっていうのを思いましたね。慎重に、真剣にやらないと多くの人を傷つけてしまう題材なのかもしれない。命というものを大事に真剣に描かないと人に観てもらえる映画にできないと思いました。
──それでも作品を撮ろうと思われたのはなぜですか?
細川:2010年に自分の子供を持ったのですが、原作を読んで、子供ができるのは当たり前のことだと思っていたが、実はそうではない。奇跡が積み重なって、自分の子どもがここにいるんだなと感じ、それを映画にしたいと思いました。
社内で事業が認められた、あるエピソード
──入澤さんは、なぜビジネスとしてこのテーマに取り組もうと思ったのでしょうか。
入澤:前の会社で「ルナルナ」という生理管理アプリのサービスをやっていました。そもそも女性が妊活などを頑張っていても、男性が何もしていないという現状をずっと感じていました。
男性の参加が遅れることで、不妊治療自体のスピードが遅くなっている。そういうケースを減らしたいなというのがいちばんにありましたね。男性ってどうしてもそこに意識が向かないので、精子チェックのハードルを極端に下げるしかないなと思いました。そこでスマホで簡単にできるようにしたんです。
これを本当にツールとして利用してもらって、男性が前向きに取り組む、もしくは女性と一緒に取り組むきっかけをつくっていきたいなという思いがありました。
今の会社に転職して、新規事業の部署で1からアイディアを考えてくれと言われ、じゃあ男性向けの妊活製品をやりたいと思い、プロジェクトを始めました。
──会社は簡単に認めてくれたのでしょうか。
入澤:ビジネスの規模的としては、リクルートで事業展開している他の「じゃらん」や「ホットペッパー」とかと比べたら小さいですし、なんでウチでやる必要があるのかとは言われました。
ただ、開発しているときに、被験者を募ったら、ちょうど妊活しているから協力するよっていう人がいたんです。実は、その人が試しに見てみたら精子が1匹もいなかった。病院にすぐに行ってもらったら、無精子症と診断されました。その人は精巣の中には精子がいるタイプの無精子症だったので、精巣にメスを入れ直接精子をとることにしました。
結果、テストに参加してから半年後に奥さんが妊娠できたんです。その経験があったので、やはり社会にこのサービスを出さなきゃいけないなってスタッフみんなで共感して、一気に同じ方向を向くことができました。