AI監視システムと言えば、中国のそれが世界的に広く知られている。ただ基金側は米国や日本、フランス、英国、イスラエルなど民主主義国家も例に漏れないとしている。
日本のNEC、米国のIBM、Palantir、Ciscoなどの企業は、AI監視テクノロジーを提供する主要なサプライヤーだと指摘されている。ただレポートは、合法・違法、もしくは有害なデジタル監視とそうでないものを区別しておらず、技術の広がりについてのみ言及している。
またAI監視テクノロジーの範疇に、「スマートシティ/セーフシティプラットフォーム」(56か国)、「顔認識システム」(64か国)、「スマート警備」(52か国)なども含んでいる点は留意しておきたい。
レポートではまた、AI監視テクノロジーのサプライヤーとして中国企業が有力としつつも、米国企業の関連技術が供給されている国の数が32か国にのぼるという点も指摘している。加えて、「先進的な民主主義国家の51%がAI監視システムを展開している」とも調査結果を報告。
それらの国々が技術を悪用しているという訳ではないとしつつ、抑圧的な目的で使用されないように政府のガバナンスの質が重要だと結論づけている。
余談となるが、米国や英国では顔だけでなく、武器の携帯を感知するAI技術の実用化も始まっている。
英・内務省(Home Office)は16日、ストラトフォード駅で武器を検出するAIシステムの実証実験を行った。英メーカー・ThruvisionのAI技術を駆使したもので、最大約9メートル以内の距離にある服に隠された銃、ナイフ、爆発物など兵器を検出することができるとされている。
同システムは、人の体温を遮断するモノを検出。訓練を積めば、警察官は物理的検査せずとも武器として使用されうる対象を識別することができるようになるという。すでに米国ロサンゼルスの地下鉄でも使用されている技術でもある。
おそらく、AIで社会を“見る”という流れは、世界的にはもちろん、日本でも抗えない流れとなりそうである。
そのなかで、AIによって「監視されている」と捉えるか、「見守られている」と捉えるか、社会の合意がまず重要になってこよう。一方で、レポートが指摘するように、データが悪用されないようAI監視システムの正当な運営を担保するガバナンスや、透明性が必須となってくるはずである。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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