キャリア・教育

2019.09.02 07:00

通知表は本当に必要なのか? 実は法的根拠はない

DAJ / Getty Images


真新しい通知表に各教科の観点別評価と評定を「スタンプ押し」し、出席状況を仮書きし、所見の清書に入る。する。なぜ出席状況は仮書きなのかというと、出席か欠席かは終業式まで含まれるため、その当日まで通知表に記入できないからだ。
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自分の下書きと、子供たちに書いてもらった一学期のリフレクション(振り返り)シート、また学級通信のフィードバックで戻ってきた保護者のアンケート(子供が一学期でどんなところが成長したと思うか)も見ながら、一人一人の顔を思い浮かべて書いていく。

これはすべてペンで手書きである。書き間違えたら文字を削り書き直しになる。(書き直しができるのは出席簿のような「公簿」ではないからだ。公簿であれば、線で消し訂正印が必要になる。)

できあがった通知表は、以下のようなフローをたどる。
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成績一覧表とともに学年主任に提出→修正したほうがよい箇所や誤字脱字に付箋が入り修正→校長に提出→ふたたび修正したほうがよい箇所や誤字脱字に付箋が入り修正→再提出して校長印が押されて戻ってきて、子供たちに渡す

これでようやく通知表の作業が完了する。今書き出してみても、膨大な作業だなと思う。

通知表のICT化

時代が進むにつれ、作業のほとんどが校務PCでするようになり、シールを印刷して所見欄に貼ったり、修正もPC上で行ったりするようになった。時短は進んだが、逆にぎりぎりまで文章を考えるようになってしまった。

終業式の前の日に校務用プリンターが壊れて先生方があわてたというトラブルもよく聞くようになった。これも、作業のICT化が進んだからだろう。

しかしそもそも、最初の話に立ち返れば、通知表を作成しなければならない法的根拠はない。

通知表をやめるという選択肢もある。似た書類として「指導要録」がある。これは、在学する児童・生徒の学習及び健康の状態を記録した書類の原本であり、学校に作成・保管義務がある。学校教育法施行規則によると、保管は原則5年で、学籍に関する記録は20年だ。これが転校先・進学先に送られる原本であり、中学入試・高校入試などでは調査書に記入する基ともなるからである。

まず改善すべきは、すでに導入が進んでいるICT化(電子化)をさらに加速させることだろう。指導要録・調査書と連携(関連)するような様式にしたり、日頃からの授業記録など膨大なビッグデータから作成できるようにすることで一時期に作業が集中しないようにしたりすることで、より細かく子供たち一人一人を見ることができる。しかしこれでは、かえって仕事が増えてしまう恐れもある。

やがては、AIによる統計・分析により、担任がAIと対話しながら通知表を作成するようになり、「通知表を渡す」恒例の行事から、「個人面談や保護者も含めた面談で画面を見ながら話す」ような風景に変わるだろう。

単に「通知表をなくせばよい」という発想で仕事を減らすのではなく、「子供たち一人一人により適切な指導助言をする」本来の目的に立ち返り、ICTなどをうまく活用し効率よく教育の質を向上させていこうとする発想が学校に求められている。

連載:地方の現場から見た教育の今
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文=望月陽一郎

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