その時は、「それは妙案だ!」と盛り上がったものの、ある人が「で、誰がその機体を運行管理するんだい?」と言い、その瞬間、みなが現実に引き戻されてその話は立ち消えになった。そう、その当時はアマゾン社内には貨物機の運行管理をできる人材がいなかったのだ。
しかし、その後10年も経たずに、アマゾンは必要な人材と機材をそろえ、自社で貨物機の運航を開始したのだ。「Make impossible possible!(不可能を可能にしろ!)」。これはワールドワイドオペレーションのSVP(シニア・バイスプレジデント)であるデイブ・クラーク氏の口癖だ。「アマゾンはこうやって全ての不可能を実現してきた」という一例である。
スタバで注文品受け取り━━アマゾン、ラストワンマイルへの挑戦
アマゾンの成長のすざまじさを感じつつ最初に向かったのは、スターバックス社の本社だ。今回のツアーでは、アメリカのコーヒー文化を大きく変貌させたこの企業、スターバックスと、同じくアメリカの消費文化に文字通りイノベーションを起こしたアマゾンとの、日本では見られない「連携」が新鮮だった。
スターバックスのロゴに描かれている人セイレーン(人魚の姿をした海の怪物)が屋根の上で出迎えてくれる煉瓦造りの建物と、ウッディーな内装の建物。本社としての機能に加え、併設されたハイセンスな空間の「スターバックスリザーブ(高級コーヒー豆を使い、様々な淹れ方を提供する上級店舗)」は、一般カスタマーも公開されている。
本社1Fも一般公開されており、コーヒー豆に関する知識や、スターバックス創業からの歴史が年表などスターバックスに関する様々な情報の展示がある。年表には他の著名な企業の創立年度や世界での出来事も刻まれているが、たとえばAmazonに関しては、現在の見慣れたロゴではなく、立ち上げ当初のロゴが使用されているという凝りようだ。
スターバックスが提供するのは、「サードプレース」家でも職場でもない第3の場所。その言葉を体現するような本社だった。
スターバックス本社ビルの一部には、アマゾンが提供する生鮮食料品宅配サービス「Amazon Freah」のピックアップポイントが併設されている。通常は自宅への配送を行うAmazonFreshだが、この店舗は、車社会のアメリカらしく、カスタマー自らでピックアップ可能な施設となっている。
会社帰りにちょっと寄ってその日の食材をピックアップして帰る、そんなライフスタイルに合わせた施設だ。またこの施設には、Amazonが米国内で積極的に展開する「Alternative Delivery Point(自宅以外の配達場所)」としての機能もあり、「Amazon Locker」と呼ばれる受け取り専用のロッカーや、アマゾンで購入したものを返品出来る無人の返品受け付け機などもある。
つまり、まさにワンストップでアマゾンとのやり取りができる場所になっているのだ。ラストワンマイル問題は日本同様アメリカでも大きな課題となっており、このような多くの施策が実行されている。日本にもいずれこのような施設が出来るのだろうか。