「ESG投資とは何か」と問われて、すぐに思いつくのは、例えば、環境に悪い(=地球温暖化ガスを排出する産業)会社への投資を止める、環境によい(=地球温暖化ガスを排出せずに発電をする)会社への投資を増やすという投資手法であろう。前者をブラックリスト化とか、ネガティブ・スクリーニングと呼ぶことが多い。後者は、ポジティブ・スクリーニングと言うことが多い。
では、このように、投資対象を限定すると、ファイナンス理論(のかなり基本的な原理)によれば、必然的に、リターンは(ESGを考慮しない投資戦略に比べて)低くなる。ESGを考慮せずに(リスクを一定として)リターンを最大化している投資戦略では、すべての企業の株のリスク・リターンを考慮したうえでポートフォリオを組んで、同じリスクで最も高いリターンが期待できる効率的フロンティアを計算している。投資家は自身のリスク回避度を考慮して、効率的フロンティアから一点を選ぶことになる。
ところが、ESGを考慮していくつかの企業を投資対象から除外(ゼロ・ウェイト)する、いくつかの企業をオーバー・ウェイトすることをあらかじめ決めると、効率的フロンティアの達成は困難になる。より正確に言うと、ネガティブ・スクリーニングやポジティブ・スクリーニングでは、投資の効率的フロンティアを上回ることはできない。