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2019.07.30

今、あえて地域密着。地元ならではの雑誌が作る賑わい

伊豆高原在住の舘野茂樹氏が手がけるリトルプレス「is」

熱海がますます熱い。駅周辺にはスイーツ店が相次いでオープンし、長らく空いていたテナントも次々に埋まりつつある。今年のGWの人出もかなりのもので、行列ができている店も多く見られた。

東京からのアクセスの良さに加え、情報番組やバラエティ番組で連日のように熱海が取り上げられていることもその大きな要因のひとつだろう。

しかし、テレビや雑誌で取り上げられる店や観光スポットは、観光客を相手にした有名どころがほとんど。熱海を何度か訪ねたことがある人は、その手の情報に食傷気味になっているのではないだろうか。

他の観光客が知らない熱海の魅力を掘り下げたい。そう思う人がいるなら、近年、相次いで刊行されている地域密着の「リトルプレス」をチェックしてみてはいかがだろうか。リトルプレスとは、個人や団体が自ら手がけた出版物のことだ。


『Hygge あたみらへん』の創刊準備号と創刊号。手に収まりやすいA5サイズで計72ページのボリュームだ。

『Hygge あたみらへん』というリトルプレスを知ったのは、熱海の雑貨屋兼喫茶店「MY TABLE」(現在は閉店)を訪ねた時のこと。創刊を告知する小さなチラシが店頭に置かれていたのだ。今でこそ日本でも注目されてきた「Hygge(ヒュッゲ)」という言葉だが、当時は初めて聞く言葉で、気になって手にとってみた。

「Hyggeとはデンマーク語で『人と人とのふれあいから生まれる、温かな居心地のいい雰囲気』を意味する、 他の国の言語には置き換えられない言葉。 そんな居心地のいい何かを探求しながら、 あたみらへん(熱海、伊豆、湯河原、小田原、函南、沼津、三島etc…)のヒュッゲな人やモノ、こと、暮らしを提案・紹介していくリトルプレスです」とそこには書かれていた。

熱海に移住した私も制作に参加

よく見ると創刊号はまだ準備中で、ライターを募集しているという。熱海に移住したばかりの筆者は地域に溶け込むきっかけになればと思い、早速コンタクトをとってみた。程なくして返信があり、一度、会って打ち合わせをすることになった。

指定されたカフェに行くと、そこには二人の女性が待っていた。一人は熱海在住でデザイナーの大沼園子さん、もう一人は熱海出身東京在住の編集者・ライターの国分美由紀さん。二人が立ち上げメンバーで、それぞれ15年以上のキャリアがあるという。


左がデザイナーの大沼園子さん、右が編集者・ライターの国分美由紀さん。現在、次号の編集作業も進んでいる

「お互い本業があるので、なかなか準備が進まなくて……」と、当初は昨年夏頃の創刊を予定していたが、ややずれ込み、実際に創刊されたのは12月の末頃だった。
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文=高須賀 哲

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