公共福祉よりも私的な利益に価値を置くと思われる国アメリカは、自ら生み出した問題に本当に対処できるのだろうか。
背景
グーグルは、10億ドルの追加投資の一環として、2億5000万ドルの投資ファンドを設立した。不動産デベロッパーが市場全体で最低5000戸のアフォーダブル(価格が手ごろな)住宅を建築できるよう、インセンティブを提供するためだ。
グーグルはさらに、フィランソロピー事業部門「Google.org」に5000万ドルを拠出し、ホームレスや強制退去という問題に重点的に取り組む非営利団体を支援する。ホームレスや強制退去は、アフリカ系アメリカ人が特に大きな影響を被っている問題だ。
ビジネスニュースサイト「カルチャーバンクス(CultureBanx)」の報道によると、2017年にサンフランシスコ市がホームレスに関して実施した調査は、市の人口全体に占めるホームレスの割合が6%である一方、アフリカ系アメリカ人に限ってみれば34%に上るという状況を明らかにしている。
グーグルは、10億ドルのうち大半を占める7億5000万ドルを、あらゆる所得層を販売対象とした最低1万5000戸の住宅開発支援に充てる計画だ。
グーグルはサイト上で、「収入が長期的に中・低レベルにとどまっている住民向けのアフォーダブル住宅が、慢性的に不足しているという状況がある。こうした状況に対処するうえで、今回の投資が重要な役割を果たせることを願っている」と述べた。
とはいえ、不動産デベロッパー各社は、こうしたタイプのプロジェクトに必ずしも乗り気ではない。それにはいくつかの理由がある。サンフランシスコ市の有権者は2016年、アフォーダブル住宅プロジェクトを支援する「アフォーダブル住宅信託基金(Affordable Housing Trust Fund)」への拠出金支払い対象となる建物の割合を、20%から30%に拡大する提案を住民投票で可決した(不動産デベロッパーは、市場価格の住宅・商業施設を開発する際、定められた部分に応じて基金に支払うことが義務づけられている)。