サンフランシスコの当たり前「男女共用トイレ」は快適そのものだ

(左)皮膚科のドクターオフィス(右)Paris Baguette店 以前は男性トイレだった(いずれも筆者撮影)

6月は、アメリカでは「プライド月間(Pride Month)といわれ、LGBTQの権利や文化、コミュニティーの支持を示し、LGBTQが直面する問題に光をあてる月である。そこで、今回は身近な問題である「男女共用トイレ」を取り上げた。 

私が住むベイエリアでは、2、3年前ぐらいからトイレの男女共用が増え、性別に関係なく利用できる「ジェンダーフリートイレ」になってきている。私が見る限り、公共施設で使用するトイレの8割くらいは男女共用になっている。これは、LGBTQの権利確保の一環としての普及が進んでいるからだ。北欧では男女共用トイレはあたり前のようだが、ここベイエリアでは、最近のことだ。

サンフランシスコは全米50都市中、LGBTQの人口が最も多い都市だ。LGBTQのL(レズビアン)は性自認が女性の同性愛者。G(ゲイ)は性自認が男性の同性愛者、Bは(バイセクシャル)で男性、女性の両性を愛することができる人、Tは〔トランスジェンダー)で、体と性別と性自認が一致しない人。それに1996年以降、Q(クエスチョニング)が加わり自分の性別がわからない、決まっていない人を指す。またQは性的少数者の総称を表す「クィア」という意味でも使われている。

2015年、連邦最高裁が同性婚を認め、50州のうち37州で法的に結婚が認められるようになった。サンフランシスコのカストロ通りなどはゲイタウンの長い歴史があり、LGBTQの人口割合は都市ランキングで6.2%で1位。全米では平均4.5%(Gallup社2017年調査)なので、他州の平均に比べ約2%以上も高い。

サンフランシスコの街を歩いていても、買い物をしていても、散歩をしていてもゲイカップルが手をつないで歩き、時には、ハグし、キスをしている。四季があまりなく、夏は涼しく、冬は暖かい気候がおおらかな街の雰囲気を生む手助けをしているのだろうか。住み始めた当初から、LGBTQ当事者でない私にも違和感はなかった。街自体の空気が彼らを受け入れている、多様性にあふれた街だ。

そんな地域に住んでいても、後述するトランスジェンダーのトイレ問題は、考えたことがなかった。私自身がこの問題を考えるようになったのは、案内表示が変わって「男女共用トイレ」を使うようになってからである。

ゲイ問題に限らず市民の権利が平等となり法が変わっていくには、それを勝ち取るための長い長い闘いと年月を要し、ようやく、少しづつ変わっていくのだと感じる昨今である。
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文=アントラム栢木利美

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