つまり不動産デベロッパーは、プロジェクトの拠出金支払い対象部分に関して、1平方フィートあたり約200ドル(約2万1700円)を支払わなくてはならない。10万平方フィートの賃貸住宅を開発する場合、基金への支払額は約600万ドル(約6億5087万円)になる計算だ。
サンフランシスコ市のアフォーダブル住宅信託基金には、資金源が3つある。リンケージ料(中心部にオフィスビルなどを開発する業者が、アフォーダブル住宅開発に資金を拠出する制度)と、インクルージョナリー・ハウジング料(10戸以上の新規住宅開発時に、市場価格以下の住居を含めない場合に拠出する制度)、地域インパクト料(新たな区画整理区域で開発を行う場合の拠出制度)だ。
サンフランシスコ・クロニクル紙によると、これらの拠出金総額は、3年前は年間1億1100万ドル(約121億円)だった。その後は会計年度ごとに、5800万ドル、5000万ドル、そして3500万ドルまで減少している。
テック大手vs住宅問題
今度は北に目を向け、マイクロソフトとアマゾンが本拠を置くワシントン州シアトルの広域都市圏を見てみよう。そこでも、同様の住宅難が生じている。
マイクロソフトは2019年1月、信託基金を設立して中所得者向けの住宅建設を支援するために4億7500万ドルを拠出するとともに、ホームレス支援に2500万ドルを寄付すると発表した。
シアトルの低所得者やホームレスを支援するための2500万ドルという金額は、マイクロソフトにとってははした金にすぎない。別の言い方をすれば、同社の年間純利益のわずか2.7%相当だ。さらに、同社の純利益は過去10年間で1840億ドル(約20兆円)に上った。広告費を一度だけ、31%増額したと考えてもいいだろう。
今後の見通し
サンフランシスコ市の有権者は2018年11月、ホームレス対策のために大企業に課税することを定めた「提案C(Proposition C)」を可決した。テック大手が同市のホームレス数を引き上げる一因になったという論争において、住民側が勝利をおさめたわけだ。
提案Cは、ホームレス救済プログラムの資金を確保するためのもので、大企業からの税収は毎年3億ドル(約326億円)になる。サンフランシスコ市のホームレス対策予算が2倍になるわけだ。こうした予算の増額と、グーグルが計画している住宅投資によって、ホームレス対策は大きく進む可能性がある。ただしグーグルは、住宅開発の具体的な基準や開始時期を明言していない。