キャリア・教育

2019.07.09 18:00

読売新聞→NHK→マカイラ。ある事件記者の転身

生き方や働き方に正解はない。雇用の流動性が高まり、転職はもはや珍しい話でもなんでもない。だからこそ他人の転職に学ぶことは多いと常々思う。

しかしこの人の転身には驚いた。

島契嗣(しま・けいし)。2010年、新卒で読売新聞大阪本社に入社、初任地の香川県高松市で3年間の事件取材を経験し、NHKに転職。長野放送局勤務を経て、東京の社会部へ。警視庁担当として数々の事件を取材し、警察組織の頂点である警察庁の担当になった。その後、2020年に向けて期待と緊張が高まる東京都庁を担当した。社会部記者として王道中の王道を突き進んでいた。

ライバル会社の若手記者同士、地方赴任中に知り合った。

この春、NHKを退職したと聞いた。新天地はマカイラ。2014年に設立された「パブリックアフェアーズ」(公共戦略コミュニケーション)のコンサルティング会社だ。公共的・社会的課題に関するイシューやルールメイキングについて、企業や団体などからの依頼を受け、政治家や業界団体、ステークホルダーへの様々な働きかけを行う。事件記者からの異例の転身だ。

マカイラの藤井宏一郎代表は「お互い熱いものを感じました。記者の取材力や情報収集力は非常に役に立つ。パブリックアフェアーズにメディアやジャーナリズムの視点を持ち込んでほしいですね」と期待する。

とかく記者は「潰しがきかない」と言われてきた。大手メディアからウェブメディアへの人材流出は数年前から続いているが、今年に入り、全くの異業界への記者の転職が相次いでいる。誰もがインターネットやSNSで発信力を持つようになったからこそ、プロの取材力や編集力が評価されるようになったように思う。

「僕の中で革命が起きたんですよ」

数年ぶりに東京で再会した彼は熱っぽく話した。こんなに饒舌だったかと驚いた。いつも何か狙っているような鋭い目をしていた事件記者の頃とは打って変わり、表情も生き生きしている。



こんなことも言っていた。「メルカリが僕を変えたんですよ」。「僕はシェアリングエコノミーに出会って変わったんです」。全くわけがわからない。一体彼の中でどんな革命が起き、何が彼の人生を変えたのか、話を聞くことにした。
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文=林亜季 写真=柴崎まどか

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