読売新聞→NHK→マカイラ。ある事件記者の転身


合コンをすると、女性たちがみんなメルカリの話をしていた。ユニクロで買った服もメルカリで売るのだ、と。メルカリをトランクルームのサービスのように使っていた。

当時都内で駐車場を借り、年収分ぐらいする車に乗っていた。それも一つの憧れだった。しかしメルカリへの取材を機に「シェアリングエコノミー」の概念に触れ、所有することへのこだわりが全くなくなった。車は売った。

誰が、いつ逮捕されるか。かつてはそのことばかりを考えていたが、元々インターネットやテクノロジーへの肯定感があった。メルカリを巡る取材を機に、人の行動や価値観を変えるようなビジネスの面白さに気づいた。新時代のルールメイキングの必要性を肌で感じた。

「新しい世界を見たい」
「もっとポジティブで、元気で、イケてる考え方の人たちと働きたい」
「傍観者、記録者から、プレーヤーになりたい」

昨年末、城氏がメルカリを辞めると聞いた。「どこに行くんですか?」。そこで初めてマカイラという会社を知った。パブリックアフェアーズという仕事を知り、興奮した。城氏の名前は出さず、マカイラの採用に応募した。

マカイラの藤井代表は、かねがね城氏から「優秀な記者がいる」と聞いていた話と似たような人物から応募が来たことに驚いた。話してみると、同一人物だった。テクノロジーをどう社会にソフトランディングさせていくかに関心を持っている。記者を採用するのは初めてだったが、大きな期待を持って迎えることにした。



藤井代表はこれからのルールメイキングについてこう語る。

「インターネットは今世紀前半、社会を大きく変えていきます。これからどういうルール、どういうガバナンスで世の中をつくっていくか。これまでの課題は担当する省庁がわかりやすかった。しかしこれからは一つの省庁に当てはまらない、そもそもどこの担当かわからない、業界団体もどこに持って行ったらいいかわからない、そんな複雑な社会的要望や課題がたくさん出てきます。そんな中で政府担当者や各省庁と信頼を築き、擁護や支持を獲得しながら、合意形成をしていきたい」

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相手の本音を引き出す記者のコミュニケーション力や、信頼関係の築き方にも期待を寄せているという。そういえば彼は非常に返信が早い。取材先の信頼を獲得する上で最低限の心得なのだという。
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文=林亜季 写真=柴崎まどか

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