少子高齢化に悩む山間地を支える存在に
周囲の自然を生かした複数の生業を持つことで収入を安定させる方法は、実は新しいものではない。昔の日本では、農閑期に山の手入れや伐採を行ったり、炭焼きをして暮らしている人が多かった。自伐型林業は、こうした昔ながらの里山の暮らしをアップデートしたライフスタイルとも言える。
6月22日に開催された自伐型林業推進協会の設立5周年記念フォーラムでは、前述の大谷さんをはじめとした30〜40代の自伐型林業家によるパネルディスカッションが行われた。その中には、都市部から移り住んで自伐型林業を始めた人もいる。もちろん、林業の技術も重要だが、持続的に収益を上げるには、十分な山林を確保できるかどうかがカギとなる。前述の中嶋さんによれば、自伐型林業で生計を立てられる目安は、施業者1人あたり50ヘクタールの山林を確保するだという。
こうした動きを受けて、各地では山林マッチングや研修会の実施など、自治体が自伐型林業を後押しするケースも増えている。地域おこし協力隊として自伐型林業の担い手を募集し、育成している地域もある。
日本中の山間地域で少子高齢化が進んでおり、手入れの行き届かない山が増えており、シカやイノシシなどによる農業被害も深刻だ。そんな中、若い世代が自伐型林業の担い手となれば、地域に根ざして山の手入れをしてくれる上に、収益を上げてくれる意義は山間地では非常に大きい。自伐型林業推進協会によると、2019年4月の時点で自伐型林業を推進している自治体が44カ所ある1800人以上が全国で活動している。古くて新しい生業・自伐型林業は、山間地域で今後ますます必要とされていくことだろう。
連載:ニッポンのなりわいとヨリドコロ
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