ニッポンのなりわいとヨリドコロ

美しい山づくりと経営の両立を目指す大谷訓大さん。昨年、地元の材木市場が選ぶ木材優良出荷者として表彰された。

日本の面積の約7割は森林に覆われている。実は、日本は森林大国なのだ。しかし、長引く材木価格の低下などもあり、日本の林業は厳しい状況に置かれている。しかも、林業は他の産業では考えられないほど、収益化までの時間が長い。植林して十分に木が育ち、伐採して収益を得るまで少なくとも50年、長ければ100年以上の時間がかかる。

そんななか、注目を集めているのが自伐型林業だ。自伐型とは「自分で自分の森(もしくは決まった森)の木を伐る」林業のこと。ここで多くの人は疑問に思うのではないだろうか。「自分で自分の森を伐るのは当たり前じゃないか」と。

「儲からない」林業に参入する理由

日本では今、多くの山林所有者が森林組合に山の管理を委託している。というのも、第二次世界大戦後、日本では復興のために大量の木材が必要となった。そこで、木材の安定供給などを目指し、森林組合などの林業事業体がまとめて山の管理を請け負う流れができたのだ。

そして今、新たに自伐型林業に参入し、生計を立てる人が増えている。鳥取県智頭町で自伐型林業を始めた大谷訓大さんもその一人だ。アメリカで暮らした後、地元・智頭町に戻ってきた大谷さんは森林の美しさに目覚め、実家が所有する山林40ヘクタールで自伐型林業を始めた。

「しかし、そのうち20ヘクタールは斜面が急で、林業に適さないので、実際に林業を行えるのは20ヘクタールほど。個人事業主として始めて、最初の3年は冬季にアルバイトもしていました。その後、株式会社を設立し、高齢化で山の管理ができなくなった山主さんから頼まれた山の管理も行っています。また、林業の他に農業も手がけています」

現在、株式会社皐月屋の代表となった大谷さんは、社員3人とともに200ヘクタールの森林を管理している。さらに、4年前には自伐型林業の技術や知識を学べる林業塾「智頭ノ森ノ学ビ舎」を設立した。

「参加者は地元の人だけでなく、町外や県外からの参加者もいます。大工さんからシェフ、消防士、林業関係者など、10代から40代まで年齢も職業もさまざまですね。その中の4人は、個人事業主という形で自伐型林業に取り組んでいます」

大谷さんの場合、実家が山林を所有していたが、山林を所有していなくても自伐型林業を始める人もいる。その場合は、管理を委託したい山主と契約を結び、林業のフィールドを確保する。そして、自分の山ではないが、自分の山のように、長期に渡って定期的にコツコツ手入れを行う。

文=吉田渓

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