同国では輸入は認められていたものの、15年前からフカヒレの採取(ヒレを切断した後、胴体は海に捨てる)は禁止されている。また、バンクーバー市やミシサガ市(いずれもアジア系の人口・レストランが多い)など、19の自治体はすでに以前から、輸入を禁止している。一方、連邦レベルでの禁止を目指した議員立法案は、これまで5回にわたって否決されていた。
ジョナサン・ウィルキンソン漁業海洋相は新法の成立に伴い発表した声明で、「フカヒレの採取は間違いなく破壊的な行為であり、サメの生息数の減少につながっているほか、海洋生態系を脅かしている」と指摘。新たな法律は「海洋環境の保護におけるカナダのリーダーシップを明確に示す例だ」と述べている。
政治化する「食」
国連食糧農業機関(FAO)によると、フカヒレの主な輸入国は中国の他、日本、マレーシア、タイ、スペインなど。この食材については、米プロバスケットボール協会(NBA)のスター選手だった姚明をはじめとする著名人らが、使用の中止を求める活動を行っており、香港と中国では販売量が減少しているという。
野生生物保護団体のワイルドエイドの代表はフカヒレについて昨年、米紙ワシントンポストに次のように語っていた。
「意識向上を目指すキャンペーンや、政府が公式の宴会などでフカヒレの提供を禁止したことなどもあり、中国本土では消費者の行動に変化がみられる。だが、香港と台湾のレストランでは依然として、フカヒレスープが提供されている。また、タイやベトナム、インドネシア、マカオなどでは消費量が増加している」
フカヒレを取り巻く議論は、近年のフォアグラを巡るそれを思い起こさせる。もう一つの高級食材であるフォアグラに関して、倫理的な食習慣において料理人や消費者が果たすべき役割についての議論が繰り広げられた。
若い世代はこれらの高級食品の消費を避け、研究室で製造される代替食品(米アルファ・フード・ラブズが藻類を原料に「細胞農業」によって生産する代替フカヒレスープの「The Faux Fin」など)を選ぶようになっている。ますます政治色を強める食品業界において今後さらなる変化を起こしていくためには、消費者がその購買力を行使していくことが必要なのだろう。