ビジネス

2019.07.05

競合なし。阪大のレジェンドが挑む新しい再生医療

冨田憲介(左)と岡島正恒(右)

将来の新規株式公開(IPO)時には、「ユニコーン」規模になるのではないか、と噂されているバイオスタートアップがある。大阪大学発のステムリムだ。

アンジェス、オンコセラピー・サイエンスの2社をIPOに導き、日本のバイオスタートアップの草分け的存在である会長CEOの冨田憲介(左)。「レジェンド」と言われている彼が2013年7月に取締役に就任以降、取り組んでいるのが再生医療分野で革新的な試みを行う同社である。18年12月に総額約14.5億円の資金調達、19年3月には米メディシノバで副社長を務めていた岡島正恒(右)を社長COOに招き、さらなる成長曲線を描く。

「我々が世界に提唱しているのが『再生誘導医薬』という新しい概念。物質の投与で、骨髄に存在する外胚葉性間葉系幹細胞を循環血流中に動員し損傷組織に集積させ、人が本来持つ(組織修復)能力を最大限に引き出し、組織・臓器の再生を実現する医薬品。生きた細胞を直接治療に使用しないため、細胞医療とは異なり、品質管理も容易で製造コストも安く、製品輸送上の課題もなくグローバル展開できる。かつ、幅広い適応症をカバーできる可能性がある」と冨田は話す。

患者の体外で人工的に培養した幹細胞や、幹細胞から人工的に構築した組織などを体内に移植し、損傷した臓器などの失われた機能を回復させる再生医療が主流の中、再生誘導医薬は全く異なる、新しいアプローチをとる。内因性幹細胞を活性化・分化させることにより、損傷した臓器や組織の失われた機能を回復させる。

同社は現在、難病指定されている表皮水疱症に対する治療薬では医師主導治験(フェーズ2相当)を実施中。導出先の塩野義製薬により脳梗塞の臨床試験が行われ、心筋梗塞に対する臨床試験も射程に入っている。また、変形性ひざ関節症、肝硬変、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎や難病のALSなど数多くの疾患に効果を持つことも非臨床試験で確認している。「世界でも競合企業が存在せず、グローバル水準で先頭に立つポテンシャルは大いにある」(岡島)


冨田憲介◎1974年現第一三共入社。日本イーライリリー、現サノフィなどで新薬開発・事業開発責任者。現アンジェス社長、オンコセラピー・サイエンス社長を歴任。2019年3月より同社会長に就任。

岡島正恒◎2006年よりメディシノバ東京事務所代表、副社長。以前は、大和証券SMBCにて、インベストメントバンカーとして、主にバイオベンチャー、メディア、通信、IT業界を担当。19年3月より社長。

文=山本智之、写真=若原瑞昌

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