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世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

角野栄子

2018年、児童文学の国際的な賞である国際アンデルセン賞・作家賞を受賞した、児童文学作家・角野栄子。主人公・キキが時に迷い、揺れ動きながら成長していく姿を描いた『魔女の宅急便』(福音館書店)や40作品が刊行されている「小さなおばけシリーズ」(ポプラ社)など、彼女が手掛ける作品はどれも長く愛され読み継がれている。

「24歳の時のブラジル移住はワクワクする冒険でした」──そう語る彼女の人生の岐路と創作意欲の源泉とは?

──作品づくりのどんなところに楽しさを感じますか?

まずは絵を描くところから、私の作品づくりは始まります。ストーリーは考えずに、キャラクターと彼・彼女が住んでいる世界をイメージするのです。例えば、おいしい食べ物が好きなおばけの男の子なら、頭も体も丸いシルエットをしていて、住んでいるところは高級レストランの屋根裏がいいわね……という具合に。想像を膨らませながら描いていくときが最も心踊る瞬間です。

描いた絵からストーリーや文字を起こしていって、完成するまでは何回も書き直すのですが、私はこの過程も好き。言葉を一つ変えてみたり、ストーリーの展開を少し変えるだけで、まったく別の物語に出合えます。書き直すたびに新しい発見があるから楽しいんですよね。

私はもともと結婚して子供がいるごく普通の主婦で、作家になるつもりはありませんでした。34歳のときに大学時代の恩師(トルーマン・カポーティの『ティファニーで朝食を』の翻訳などで知られる龍口直太郎氏)に声を掛けてもらって、デビュー作となる『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』を書いたんだけど、そのときも本当に何回も書き直しました。書き直しているうちに「なんて楽しいんだろう」と思えてきて、自分は書くことが好きなのだと気づいたんです。

デビュー作から7年は本を出すことがなかったけど、毎日書いていましたね。今も好きなことをしているという充実感を持ちながら、作品づくりをしています。

──書き直しながら作品を推敲していく中で、気をつけていることはありますか?

言葉の音とリズムを大切にしていて、書き終わったら5回くらい声に出して読むようにしています。私は5歳のときに母を亡くしてから父が育ててくれたんですけど、落語や講談などいろいろなお話を聞かせてくれました。明治生まれの父は小さな子ども向けの絵本なんて知らなかったけど、私が寂しい思いをしないようにしてくれていたんですよね。リズミカルな言葉のおもしろさを知ったのは、そんな子ども時代の影響です。

どんな人もリズム感を持っているから、音の響きが心地よくてリズムにのっているものでないと、読んでいて楽しくないですね。子どもの本は特にそう。だから書いた言葉と体の中にあるリズムが合うかどうかを音読しながら確認して、違和感があれば手直ししていきます。

言葉って、教育的には意味が重視されがちですよね。でも、言葉の意味に重きを置いて物語にテーマを持たせてしまうと、読む人から想像の自由を奪ってしまう。大人が面白いと思っても、子どもにとって面白いとは限らない。だから私は、意味やテーマを考えて書きません。読む人に物語の中で自由に遊んでほしいから、言葉のリズムや音から頭の中に映像が浮かんでくるような「楽しい物語」を書きたいと思っている。言葉から楽しさは伝わるものです。

構成=松尾友喜 イラストレーション=Willa Gebbie

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