多くの女性からすれば、毎月一回の生理に悩まされ、生理用品は生活必需品と言っても過言ではない。しかし、税率が軽減されていないためドイツの法律ではまるで贅沢品のような扱いを受けてしまっている。ちなみに食品のカテゴリーに入る三大珍味の一つ、トリュフは7%だ。
この消費税の格差に注目したのがドイツのThe Female Company。タンポンのサブスクリプションモデルを展開するスタートアップ企業だ。
2人の女性起業家が考えた巧妙なアイデアは瞬く間に税率格差の問題を世論に提起した。その方法はいたってシンプルだ。7%の軽減税率が適用されている本に付録としてタンポン15個をつけ、販売した。あくまで本として売られているので、通常なら税率19%のタンポンが7%の税率で買えるることになる。本は40ページにわたり、生理用品に関連する面白い話が書かれている。
彼女たちのアイデアで本は1日で売り切れ、1週間以内に第2版が売り切れた。インフルエンサーをはじめ、ドイツの政治家たちもこのタンポンブックをSNSでシェアするようになった。
自分たちの事業をもっと認知してもらったり、消費者とのエンゲージメントを向上させるにはどうしたら良いのか。「自分たちのブランドを知ってほしい」という一方向のPRではなく、社会に埋もれる女性たちの「声」に寄り添いながらプロジェクトを進めることで多くの人から共感を持って認知されるようになった。
The Female Companyを立ち上げた2人
この作品は、世界最大級の広告祭であるカンヌライオンズのPR部門でグランプリを受賞した。審査委員長のミシェル・ハットンに話を聞くと、「今回ジェンダーの問題としてこの作品を評価したわけではありません。あくまでビジネスの視点でグランプリを決めました。税率の格差の問題に真っ向から立ち向かいながら、ビジネスを進めたことに対して審査員チームはポジティブな印象を受けました」と答えた。
「ダイバーシティ」がカンヌライオンズの様々な部門やセッションで叫ばれている。いかにマイノリティに配慮しているか。マイノリティに光をあてているか、などだ。しかし、審査委員長が述べた通り、「ビジネスを最大限に成功させる」という本質的な結果を公平に評価することが、実は作品のダイバーシティにつながるのかもしれない。
PR部門の審査委員長、ミシェル・ハットン(写真=井土亜梨沙)