ベテランリサーチャーならではの発想に立ったそのユニークな準備、装備から実際のウォーキングレポート、そしてそこからの「東京再発見」までを、ご寄稿いただいた。
過去最大の長さとなった今年のゴールデンウィーク、東京都内を毎日平均20km、合計200km歩いた。
なぜ「200km」なのか。
「徒歩での旅」について調べてみたところ、江戸時代には、東海道の日本橋から京都間を「11泊12日」かけて移動したらしい。これは1日につき、約10里半になる。仮に10里(1里は3.9km)歩いたとして、1日の移動距離は約39kmにもなったという。これを連続10日強続けたのが、昔の人の旅だった。
フルマラソン級の距離を続けるのは難しいにしても、せめてその半分の20kmを10日間、東京を縦横無尽に歩いて合計200km、と考えた。これでも、東京―静岡県藤枝市間に相当する距離である。
「東京」という都市のリサーチもかねて、200kmのフィールドワークを実践してみることにした。まずは、ルートをデザイン。
実行に先駆け、都内のどこを歩くか設計した。リサーチには、事前設計がすべてと言っていい。専門用語でいうと、いわゆる「プロジェクト計画」である。JR山手線沿いの半分、少し小さめの区の区界、オリンピックのマラソンコースの半分など、いろいろな「20km」をデザインした。以下、カッコは予定とした。
1. JR山手線を2日間で(概ね40km)
2. 目黒区界(概ね25km)
3. 2020年東京オリンピックのマラソンコースを2日間で(概ね45km)
4. 日々のそぞろ歩き(1~3に加え、全体で200kmになるように)
4月。具体的な冒険の準備
そして4月に入ってからは、「体力」「回復の方法」「持ち物」についての準備を始めた。
まず「体力」。週末、自宅から目黒川沿いの桜を愛でながら、天王洲アイルあたりをゴールとして、往復20kmコースを歩いてみた。次の週末は、北関東の麦畑のど真ん中を20km歩いてみた。20kmという距離がどういうものなのか、身体と相談しながら、感覚を叩き込んだ。
次に「回復の方法」であるが、次の日の移動開始の間までに、きちんと回復しておく必要があった。歩き終えてから体の違和感の箇所を確認しながら、ストレッチ、マッサージ、銭湯でのリカバリー、炭水化物の摂取、そして睡眠時間をしっかり確保することを心がけた。
続いて「持ち物」。まずは、ノルディックウォーキング用のポール。クロスカントリー選手の夏季のトレーニング用に開発されたスティックで、トレイルランや健康増進等のシーンで活用されている。両膝に過分な負担をかけずに、また、上半身をも含む全身運動に寄与し、そして何より、速く移動できるので、飛び道具として入手した。
そして、iPad。移動距離やルートの記録、移動ペース(速度)等を測るために、ジョギング用のアプリ(NIKE RUN CLUB)を常時起動することにした。記録用のカメラとして、また、移動中はラジオを聞いた。
ウェアは、アウトドア用の上下セパレート可能なものを用意した。上着は涼しい日の羽織りとして。そして、赤いウォーキングシューズを新調した。
連休に入り、さっそく計画に沿って、歩くこととした。3つのルートに分けて、実際に歩いた道を紹介したい(距離はNIKE RUN CLUBでの実測値)。