これはドイツのマックス・プランク研究所が発表した研究結果。都市に暮らす人々は田舎で生活する人々よりも高いストレスにさらされ、心的な病にかかる率も高いことが以前の研究結果から分かっていたが、今回の研究では住環境が人間に与える影響が調査された。
研究チームは都市部の人工的なグリーンエリアや、自然の森のそば、荒れ地に住む人々を調査対象とし、周囲の環境が脳内の扁桃体(amygdala)に与える影響を調べた。扁桃体は人間の情動をつかさどる部分であり、扁桃体を健康に保つことがストレス耐性を高めると言われている。その結果、森の近くに住む人々は健康的な扁桃体を持っており、ストレスや不安、鬱状態をうまくコントロール出来ることが分かった。
ここで興味深いのは、都市部のグリーンエリアのそばに住む人々と、荒れ地に住む人の間に大きな違いが見られなかったことだ。今回の調査はドイツのベルリンを対象に行われたものであり、ここで言う「自然の森」や「都市部のグリーンエリア」という定義が他の国の大都市にも当てはまるかどうかは不明だ。また、森に近いエリアに住む人々は、比較的裕福な層であることも指摘されている。
さらに、森以外の様々な地形がどのような影響を人間に与えるのだろうかという疑問も浮かぶ。森と比べてビーチはどうなのだろう。ロッキー山脈のような岩山はどういう効果をもたらすのかという思いにもなるが、それは今後の研究報告に期待したい。
別の研究者は人類のルーツはアフリカのサバンナにあり、人間はみなその記憶を脳内に持っているとの主張を展開している。今回のドイツの研究者らは、人々が好ましいと思う環境は年齢を経て変化し、各人が「自然だと思う環境」で多くの時間を過ごすようになると指摘している。
2050年までに世界の人口の70%が都市部に暮らすことになると言われている。今後の都市計画のプランを練る上で、自然にアクセスしやすい環境を構築することは重要だ。そこに暮らす人々の生活や仕事の効率性を高めると同時に、幸福度の高い都市環境を作り上げることが求められている。