なぜわれわれは携帯を変えるのか
機種の交換の推奨時期になっても交換しないのは、コストがかかるからだけなのか。携帯電話の消費が落ちたのは、消費者が冷静になったからなのか。それとも市場が停滞しているからか。半世紀前の大哥大(初期の携帯電話)の価格は数万元(1万元は約17万円)もした。そして、アップルのハイエンド機種が、市場で圧倒的なシェアを獲得してからもう10年になる。市場は「もっと安く」を求めているとは限らない。
柔宇科技の製品はもちろん、フレックスパイにとどまらないが、フレックスパイは、劉自鴻氏が提唱する「柔性星球」製品の中でも、消費者の心理的なニーズにもっとも応えた製品といえそうだ。
前出のように、劉自鴻氏によれば柔宇科技は、B2BとB2Cを両立させるビジネスモデルを選択してきた。すなわち、企業顧客ばかりでなくコンシューマー市場にもサービスを展開すると同時に、さまざまな業界、さまざまな産業の企業に対して、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルセンサー技術をソリューションとして提供してきた。
また、すでに量産化した製品はフレックスパイにとどまらない。フレキシブルディスプレイを搭載した帽子、フレキシブル広告ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ搭載のスマートステレオ、フレキシブルディスプレイ搭載の家具やスマート交通製品、フレキシブルセンサーを応用したスマート電子メモパッド、フレキシブル自撮り棒、無線透明電話なども量産化に踏み切っている。
フレキシブルディスプレイとフレキシブルセンサー製品の量産と出荷に支えられた、柔宇科技の第1四半期の企業からの受注額はすでに40億元(約6600億円)に達している。フレキシブルディスプレイの売上は、予測をすでに上回っているという。
1台の携帯電話。それは単なる冷たいインテリジェントハードウェアではなく、人と世界をつなぐインターネット技術の変遷の象徴だ。イノベーションを生む業界では、ゼロからイチを、小から大を、弱から強を生むことが必要になる。飛行機、自動車、ICチップ、インターネット……。人類にとっての新分野はまさに、先駆者によるブレイクスルーによって、作られてきた。
「『イノベーション』という言葉は様々な意味を持ちますが、柔宇科技のイノベーションは、革命、変革そのものを意味します。パネルは、人とマシンが交わるインターフェイスや操作モードのすべてに変革を引き起こしえるんです。伴って、すべての産業分野が抜かりなく準備をして、タイミングを待つことが必要になると思います」劉自鴻氏は話す。
IoT(モノのインターネット)の基本は、自由な形状のフレキシブルなインターフェイスだ。その意味で携帯電話のディスプレイは、IoTの入り口にいる重要な要素ともいえる。
劉自鴻氏は「2018年は折りたたみ式携帯電話の『元年』です。2019年は『爆発の年』になってほしいものです」と語った。
フレックスパイは、さらに続く10年の主役となりうるのか。ディスプレイではフレキシブルが「もう常識」となる時代を築けるのか。注目したいところだ。
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