現在のニースはフランスのいち都市なので、日本から見ると僕は「フランス料理のシェフ」と思われがちですが、ニースに住んでいる身としては、地中海、コートダジュール、リグーリア(イタリア北部の州)の気候風土が融合する土地で生きてる意識の方が強く、自分では「ニースのシェフ」だと思っています。
「フランス料理」はひとつじゃない
そんな経緯で、僕の作る料理は一般的にイメージされる「フランス料理」と少し違うこともあり、たまに「フランス料理って何ですか?」と聞かれることがあります。僕自身も、この質問については度々考え、今では次ように答えています。
「フランス料理は、ドイツに面したアルザス料理、イギリスと海を挟んだブルターニュ料理、スペインとの国境にあるバスク料理、ブルジョワの影響を受けたリヨン料理など、様々な土地の歴史的、地理的影響を受けた地方料理の集合体」
だから、フランス料理としての共通点ももちろんありますが、違うところもたくさんんあります。中でも特徴的なのが、地域ごとに使う油脂が違うこと。鴨の脂を使うところもあれば、ラード(豚の脂)のところも、バターのところも、グレープシードオイルのところもあります。そして、南仏と言われる地中海寄りの地域で使われるのが、オリーブオイルです。
リヨン郷土料理を代表するクネル・ド・ブロシェ
動物性の脂肪なのか、植物性の油脂なのか。料理する際のベースとなるものが異なる影響は大きいです。でも、この違いがまたフランス料理の魅力であり、文化のベースのように思います。地域ごとに色があり、それが、そこで育つ人の気質にも関係していきます。
地中海式ダイエットの本質は?
食と健康について深く考えるようになり、「もう医療や対処療法ではどうにもならないかもしれない」と感じ始めていた2015年に、アメリカ最大の料理教室CIAとハーバード大教授が主宰する「Healthy Kitchen, Healthy Lives」に参加しました。そこでは、食にまつわる様々なプログラムが行われたのですが、“予防”の観点で地中海式ダイエットが多く取り上げられていたのが印象的でした。
糖質オフやグルテンフリーなどと同様、ダイエット(このダイエットは、食事の意味)の一種として度々注目されるこの食事法ですが、一体、何がいいのか。地中海に住む人間なりに、その「なんぞや」を見直してみたく思います。