そもそもどんな食事が地中海式か。象徴的だとされるのが、南イタリアやギリシャの料理です。ベースとなる油はオリーブオイル。それとともに、太陽をたっぷり浴びた旬の野菜、豊かな自然で育った雑穀、海から取れた魚介中心のタンパク質、チーズやヨーグルトなどの発酵食品を摂取します。赤身の肉類は月に1度程度で、家禽類(鶏やウズラなど)であることが多いです。
食材の質が高く味が濃いため、塩や砂糖といった調味料をあまり必要とせず、天然のスパイスや旬のハーブなど用い、オリーブオイルと組み合わせて使うのも特徴です。
そして、この地中海式の食事は、心筋梗塞や脳卒中の予防、認知症予防、肥満予防などに良いと言われています。
ただ、ニースに住んでる人たちを観察していると、食事ばかりが健康の理由ではないな、というのが正直なところです。彼らは、太陽が出れば外に向かい、海辺を散歩したり、人と会話を楽しんだり。週末には海岸沿いをランニングしたり自転車で走ったり、中には冬でも海で泳いでる人もいます。
街の象徴である「青い椅子」に座ったり、石(砂でない)の浜辺に降り立って、海を眺めてボーッとしている人も多いのですが、これはもしかしたら、マインドフルネスの瞑想に似ているのかもしれません。
太陽があり、海があり、緑があり、そこで適度に体を動かしながら、土地の恵である旬の食材を味わう。そんな日常まで含めた全てが「地中海式」の特徴であり、食事が肝であるのは間違いないのですが、体や心の充実も伴うから、健康でいられるのなと思います。そして、それが実現できる環境だから、老後を過ごす場所として、ヨーロッパの人々を魅了してやまないのです。
ヒントは日本国内にある
では、日本や日本人にも地中海式ダイエットが最適なのか? 合わないことはないかもしれませんが、僕は最適だとは思いません。日本には日本の四季があり、気候風土があるので、無理して地中海のような食事をしても、それほどの恩恵は受けられないと思います。
それよりも、地中海式ダイエットの哲学のようなところ、つまり、その土地の気候風土に合う食事や暮らしをしていくことこそ、健康への近道なのではないかと思います。この連載でも度々主張している、地域の「伝統料理」を大切にすることもその一つです。
要するに、ちょっとした「原点回帰」です。僕が考えるのは、食を中心に据えたルネサンス。
「懐かしい味を食べてほっとする」とか、「旬の食材を食べて体の調子がよくなる」とかは、経験ある方も多いのではないでしょうか。海外のトレンドやテクノロジーにのっかるより、自分たちの文化を見直し、土地や季節にあった味をいただく。そこに健康のヒントが隠れているはずです。
コラムの内容を体験できるセッションの開催が決定! 松嶋氏が「きのこオムレツ」と「特製ケチャップ」のデモンストレーションをしながら、ビジネスマンが知っておくべき「食の教養」について語ります。
Forbes JAPAN x 松嶋啓介
「おとなの味覚共育 〜欲とうま味〜」
開催日:10月10日(木)
時間:19:00〜21:00(18:30〜受付)
会場:KEISUKE MATSUSHIMA TOKYO(原宿)
参加費:15,000円(税込)※払い戻し不可
*セミナーの内容に合わせた軽食、フリードリンク付
定員:20名
申し込み方法:以下よりチケットをご購入ください
https://keisukematsushima-fj.peatix.com/view
ニース在住のシェフ松嶋啓介の「喰い改めよ!!」
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