まずは始めてみましょう。ビジネスの世界で泳いでみれば、泳ぎ方もうまくなるし、感覚が磨かれます。始めてしまえば、色んな人がサポートしてくれます。「私のアイデアでは、起業家として十分にやっていけないのではないか」という不安で、始めることをやめてしまうのが、一番もったいないことです。
求められるアイデアは、マーケットが変わるとともに、凄まじいスピードで変わっていきます。だから、最初の時点で素晴らしい、スケーラブルなアイデアを持とうというのは間違いだと私は思います。実際、私たちのところに来る起業家も、最初のアイデアは90%ダメです。
恐れずに飛び込むこと。そのなかで学び、波に乗って行けばいい。自分に合うもの、合わないものを見つけ、好みやスキルを洗練していきましょう。
どうやってお金を集めるか、というのもよく聞かれますが、自分のコアから来るアイデアを周りに投げ、どのようなプロダクト、サービスが世の中に役に立つか聞いていく、というのが市場調査です。投資家にも自分のアイデアがだめなら、どんなアイデアならお金を出すのか、どんどん聞いていきましょう。
起業は、できるかできないかではありません。やるか、やらないかです。
どうすればいいか分からなくても、「こんなことができたらいいな」と思った時に、いてもたってもいられない気持ちを大切にして、行動に移しましょう。
そして、自分は「やらないより、やっている人間なんだ」という自信を持ってほしい。「そんなことは他の誰かがやっているよ」と言われても、「『私』がやることが大切なんだ」と言ってほしい。
最初のアイデアで無理に成功しようとせずに、最初は起業ごっこをして、資金調達、マーケットテスト、チームビルディングを一通り経験して1年くらいでやめて計画的に失敗し、2社目を起こして「シリアルアントレプレナーです」と言ってしまうのも手です。企業を訪問し、「何が一番困っていますか」と聞いてそれに特化したサービスやプロダクトを作って売ってしまう、という手もあります。大きい金額だけがエグジットではありません。
日本にとどまらず、グローバルな視点を持ちましょう。社長として、色んな人に会うことは重要です。また、外に出ることで気づくこと、外に出た方が楽なこともたくさんあります。何よりビジネスをする上で、たくさんの引き出しを持っていることはすごく重要です。日本では実現が難しいことでも、アメリカではすごく簡単かもしれないのですから。
シリコンバレーには、こちらが意見を言えば「Yes, you can. I will help you.」と言ってもらえる空気があります。なんでもできるような気になります。また海外の人は、意外と「英語ができない人」に慣れているので、たとえ英語が苦手でも大丈夫です。
マインドセットを変えることで、世界へのステップが開かれます。闇雲にすべて頑張ることを辞めて、貪欲に「削る」ことを追求すると、新しい価値観が生まれます。買い物、料理、洗濯、子どもの世話にかけている時間。それらをいかに削って、もっと上手に、もっと素晴らしく生きるためにどうすればいいかを考える。そのなかで、自分にとって本当に重要なものが見え始めます。
よく「愛利さんは事業をやっていて、お子さんもいて、どのように時間をやりくりしているのか」と質問されます。答えは「ほったらかしです」。
もちろん、私が手をかけて育てるやり方もあるでしょう。しかし私は、私が夢を持って何かに挑戦している経験を伝え、話をしながら、子どもたちを仲間に入れ、やりたいことはやってもいいんだと教える方がいいなと決めました。かつては、子どもを迎えに行ったり、料理をしたりしていましたが、一切やめました。その代わり、家に帰ったら、子どもと会話をする数時間が持てるようにしています。
私も色んな失敗を繰り返しながらやっています。
フォーブスさんでは、100人のセルフメイド・ウーマンにインタビューする企画が始まる、と聞きました。100人100様のワクワクがあると思います。
皆さんも「あの人ができるんだったら、私にできないわけはない」と思ってほしい。それは皆さんのためだけでなく、生き様を見せることで、他の人のロールモデルにもなります。自分を縛っている鎖を壊して、どんどん暴れて、発信してほしいなと思います。
堀江愛利◎Women’s Startup Lab創業者兼 CEO。米CNNビジョナリーウーマン、Marie Claire誌「世界を変えている20人の女性」に選出、安倍首相訪米時の首相主催晩餐会のMCのほか、SXSW 等に登壇。主宰する「Women’s Startup Lab(WSLab)」は、イノベーションの聖地・シリコンバレーで、アクセラレータープログラムと呼ばれる起業家を養成するプログラムを運営。男性中心のビジネス環境を改革し、女性がビジネスにおいてより飛躍を遂げることができる場を創生することで、男女が共に活躍できる革新的なビジネス環境を構築することを目標として活動。