今回、多くのオークション関係者や宝石ディーラーなどに取材した。彼らが口を揃えて言うところによると、いまやハイジュエリーをこぞって買っているのは男性たちだという。もちろん女性たちも、きらびやかなジュエリーには目がない。
ただ女性たちは「身に着けること」「似合うこと」を優先して選ぶのに対し、男性たちはより純粋に「美しいから」「希少だから」「資産として」手に入れるのだ。その選び方は、どこか美術品の購入に似ている。
実はこれまでアートの世界では、ジュエリーは長いこと絵画や彫刻、工芸などと同ランクの位置づけにはなっていなかった。単なる奢侈、見せびらかしのアクセサリーと思われていたのかもしれない。だが近年、その先入観が取り払われて、特にハイジュエリーはアートの一分野として見なされるようになってきた。
1990年には29万7,000ドルだった「バローダの月」イエローダイヤモンドは、今秋のクリスティーズで1030万香港ドル(約1億4800万円)に。(c)Christie’s Images Limited 2018
現在、ニューヨークのメトロポリタンミュージアムでは『Jewelry:The Body Transformed』と題し、ジュエリーの意味を包括的に検証する展覧会を開催中(2019年2月24日まで)。また日本でも毎年のように大規模なジュエリー展が開かれている昨今だ。
なぜジュエリーがアートの仲間入りを果たしたのか。それは、自然が生み出す宝石の価値、そして人が生み出すデザインと、超絶技巧に対する価値が認められたからに他ならない。宝石に命を吹きこみ、それをアートに作り替えるデザイナーのクリエイティビティや、職人の至芸。感動を呼ぶ新奇な美しさを創出しようとするトップジュエラーたちの取り組みが、賞賛の的となっているのである。
ニュースにもなったマリー・アントワネット旧蔵の天然真珠ペンダント。サザビーズにて3642万7000スイスフラン(約41億6000万円)まで高騰。(c)Sotheby’s
狙い目は5カラット以上!?
ハイジュエリーを購入する人々がよく使う言葉に「コレクタブル」と「サインドピーシズ」がある。前者は収集に値する、といった意味。後者は、ジュエラーやデザイナーが手がけ、彼らの名が刻印されたものという意味である。つまり、1. 宝石の価値、2. デザインの価値、3. 職人技の価値がしっかり揃ったうえに、4. 高名な作り手のものであることが肝心なのだ。これらは、ハイジュエリーを購入するならきちんと押さえておきたい点である。
中でも最も興味を引くであろう、宝石の価値についてより詳しく解説しよう。コレクタブルで、かつ入っていきやすいのはダイヤモンド。カラット数やカラー、傷や内包物の有無、カットの形状やよしあしを表す明確な世界基準があり、それに沿った相場で値動きしているからだ。
ジュエリー業界のプロたちがいうには、コレクタブルなのはDカラー(無色)、IF(無傷)、5カラット以上のダイヤモンド。「タイプⅡa」と呼ばれる希少種のダイヤモンドも、とりわけ通好みで人気が高いという。タイプⅡaとは不純な元素を含まない、極めて純粋なダイヤモンドを意味する。