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2019.03.13

2019年は「宇宙資源開発元年」 300兆円市場に出遅れる日本

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ロケットエンジニアでもNASAの職員でもなく、東京で戦略コンサルティングの会社を経営する私がなぜこれらのことを知っているのか? そもそもの担当分野も宇宙ではなく、「サステナビリティ(持続可能性)」や「ESG」関連である。

宇宙との出会いとなったのは、昨年夏、宇宙資源開発のビジネスルール策定を進める国際組織「ハーグ国際宇宙資源ガバナンスワーキンググループ」から、新設した社会経済小委員会の委員になってほしいと依頼が来たことだ。

この国際組織には、各国の宇宙当局の政府関係者、宇宙法分野の国際法学者、宇宙開発ベンチャー、宇宙分野での有力な財団やNGOから45人ほどの有識者が集まっている。その中で、宇宙資源開発を将来に渡り持続可能な形で発展させる必要があるという意見が出、この分野の専門家である私が事業ルールや投融資ルール策定を担当することとなった。そうした経緯で、関係者から膨大な情報をインプットされることとなったのだ。

「グレーゾーン」が大きい宇宙業界

この国際組織が設立されたことは日本人のほとんどが知らないと思うが、実は極めて重要なことだ。これまで宇宙に関して機能している国際ルールは、米ソ冷戦時代の1966年に国連で採択された「宇宙条約」しかない。

宇宙条約には現在、101カ国が批准しているが、宇宙空間における探査と利用の自由、領有の禁止、宇宙平和利用の原則、宇宙物体絡みの損害賠償等の原則が定められているのみで、例えば資源開発での鉱区設定、通信帯域の割当、宇宙にあるモノの所有権等が明確に定まっていない。

この法的な「グレーゾーン」が大きいということは、企業が事業プランニングや資金調達をする上で大きな障壁となる。私が委員をしている国際組織が2016年に発足したのは、今すぐルールを整備しないと“マズイ”状況になると意識されたからに他ならない。

特に、目下の最大の関心事は月の水資源開発だ。各国の月探査ローバーが今後必死に探すのは、まだ発見されてはいないが、月にほぼ確実に存在するといわれている「水」を見つけるためだ。世界は我先にと、この水を掘りに一斉に月に探査ローバーを飛ばそうとしている。

なぜそこまでして水を探すのか。水は将来、月面にコロニーを作って人が住む時、飲料水や動植物を育てるためにも役立つが、今はそれが一番の目的ではない。



水は電気分解をすれば水素と酸素に分かれる。それがロケット燃料になる。それは月から地球に向けロケットを飛ばすときの燃料や、月から火星などへ行く際の燃料になる。月水を地球から月まで運ぶには莫大なコストがかかる。そのため、月で現地調達しようという発想だ。

月には数十億トンの水が存在するという予測がある。先ほど、2040年の宇宙ビジネスの市場規模は“少なくとも”300兆円と言った理由は、この資産の中にはまだ、水資源のマネーや、水資源採掘に関連する設備やゼネコン等のマネーが含まれていないからだ。
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文=夫馬賢治

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