ビジネス

2019.03.18

バリ島にエコホテルを、日本人夫婦が建設を進める理由

一般社団法人Earth Companyがバリ島に建設中のエコホテル


──企業で働く人のなかには、自社のサービスや商品がサステナブルであるということに自信を持つことができない人もいるのではないかと思います。

知宏 : 完全にポジティブな側面しか持たない商品は少ないと思います。だから、完璧を求めるのでなく、自分たちの提供するコトやモノが、ネガティブな影響に加担していないか見直したり、少しずつ改善することが重要で、もし自分の携わるビジネスが及ぼす影響に違和感を感じたときは、その気持ちに正面から向き合うことも大切だと思います。

── その意味では、1つの物事に対して多角的な視点を持って想像する力が求められていると思います。どうしたら、その感覚が養うことができるのでしょう?

明日香 : 世界の全人口が、日本人と同じ水準で生活をするには、地球が3つも必要になると言われています。すなわち、日本人は地球がサステナブルでいられる3倍ものリソースを使っているということです。

しかし、これについて直球なメッセージを投げかけても、人々の心には届きにくい。なぜなら、「知らないから」ではないかと思います。自分の生活がもたらす影響を知らず、またその影響をすでにうけていることも知らないので、いま世界で起きていることについて、思いを巡らせることが難しいのです。

知宏 : 僕たちの身近にある物の上流から下流までのすべてのプロセス、例えば携帯電話のパーツ1つ取っても、原産国の資源から商品となるまでの過程、そして壊れて捨てられる先までを辿ることができたら、自ずと意識は変わるはずです。

地域経済に貢献するホテルを

──既存の事業に加え、今年の5月にエコホテルをオープンする予定と聞きました。「未来の在り方を体現するホテル」ということですが。

明日香 : 人と地球が共存できるかたちを追求したものが、このホテルです。建設のきっかけは、社会変革を志す次世代リーダーの育成を行うソーシャル研修事業(インパクトバリ)でした。

研修中、参加者の皆さんにはバリ島のソーシャルイノベーションの素晴らしい事例を沢山見聞きし、触れてもらいます。しかし終了後、普通のホテルに宿泊すると、水やエネルギーなどの資源の浪費、また環境汚染に加担するサイクルへと戻ってしまいます。環境負荷を極力下げることをめざすアースカンパニーにとって、そこは葛藤でした。
 

エコホテルは、照明の100%を太陽光で発電し、水は雨水を循環させて使用するなど、多くの最先端エコテクノロジーを導入、暮らしとの親和性や利便性などを検証する実験場として進化させていく。

高級ホテルではプールやスパで大量の水が消費されています。宿泊客の利用する水量を平均すると、その量は1日あたり4000リットル。対してバリの人たちが生活で使う水は180リットルで、その差は約20倍以上です。高級ホテルのためにバリの水源は減り、悪化しています。同時にそのために、人々の生活基盤である稲作に使う水源が充分に得られず、貧困を悪化させています。

私たちは、バリでそういうホテルはやりたくない。周囲に良い影響をもたらすホテルにしたい。エコホテルには地域経済に貢献するため地産地消をテーマにしたショップを併設し、また太陽光パネルや雨水タンクのような大掛かりな設備のみでなく、日本でも手軽に取り入れられるような安価でシンプルなエコ商品を多く取り揃えます。

これらを暮らしの一部として体験して頂くことは、宿泊者の啓蒙にも繋がると考えています。また、宿泊の対価として得た純利益は100%、我々の非営利事業であるインパクト・ヒーロー事業(アジア太平洋のチェンジメーカー支援事業)に寄付するので、宿泊することが途上国の課題解決にもつながります。
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監修=谷本有香 インタビュー=三宅紘一郎 校正=山花新菜 撮影=藤井さおり 取材協力=Nagatacho GRID

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