ビジネス

2019.03.02

「子供が産めなくなるかも」危機感が自身を変えた。女性のための企業データベースで日本人初優勝、Clarity古谷聡美

Slush Tokyo 2019のピッチコンテストで優勝した「Clarity」の古谷聡美

例えば、時短勤務。子供が小学校4年生になるまで認められるのか、子供が小学校を卒業するまで認められるのか。子を持つ親が転職をしようと考えたら、検討すべき大きな要素である。「時短勤務可能」という一言では、この差はわからない。

2月22、23日に開かれたフィンランド発、世界最大級のスタートアップとテクノロジーの祭典の日本版「Slush Tokyo」のラストを飾ったピッチコンテストで、女性のための企業の働き方データベース「Clarity」(クラリティ)の古谷聡美代表が優勝した。日本人初の快挙だ。



「女性活躍が進められていますが、約90%の女性が『働き続けたい』と望んでいる一方で、60%以上の女性が第一子出産を機に退職しており、女性人材が活かしきれていない現状があります」。古谷代表は決勝のプレゼンでこのように訴え、聴衆の心を掴んだ。



転職サイトや求人サイトは多数あるが、Clarityは企業の「働き方」を様々なデータから透明化し、働き方や福利厚生で企業同士を比較し、仕事を探せるプラットフォームだ。特に女性が結婚、出産、育児と変化していくライフステージのどのタイミングでも、希望のキャリアを築いていけるように配慮されたサービスだ。

給与やスキルといった条件だけでなく、それぞれのライフスタイルに合う働き方ができるかを知りたい。Clarityはそのようなニーズに応えるため、様々な手法を用いて企業情報を収集し、「時短勤務」「リモートワーク」「育児休業」「生理休暇」などの項目ごとに、一目で比較できる形で公開している。

企業がアピールしたいことだけでなく、制度の整備が途上で、アピールしたくないことも含めて同じ観点で横軸で比較できるところに、このサービスの面白さがある。 Clarityを見れば、同じ業界同士でも、その制度内容や対象はかなり異なることがわかる。



本家フィンランドの「Slush 2018」のピッチコンテストで優勝したのは、機械学習のフレームワーク「Meeshkan」。今回決勝に残った他のチームはドローンの「エアロネクスト」や筋肉解析技術の「グレースイメージング」、個人の金融アカウントを一括管理する「Zuper」である。Clarityは特別なテクノロジーを使っているわけではないが、審査員たちがその社会的意義を高く評価した結果となった。 

なぜClarityは世界中の猛者たちが集まるSlush Tokyoで優勝できたのか。Forbes JAPAN編集部は日本初の優勝者、Clarityの古谷代表に取材した。実は彼女自身も婦人科系の病気を患った経験から、生きることや働くことへの考えを改めた、と明かしてくれた。
次ページ > 子宮頸がんを患い、初めて意識した「働き方」

文=林亜季

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