2月に開催された世界的なスタートアップとテクノロジーのショーケース「Slush Tokyo 2019」で来場者の注目を集めたのは、パナソニックの新規事業創出プラットフォーム「Game Changer Catapult」(ゲームチェンジャー・カタパルト)だった。他の企業や大学などと協業したものも含め、約10の「未来のカデン」のアイデアを提案した。
大企業の社員が、社内のみならず外部ともオープンに協業し、イノベーションの創出に取り組む。国内ではまだまだ珍しい枠組みである。メンバーの思いの詰まったプレゼンや、事業のアイデアを積極的にオープンにし、来場者にその可能性を問う姿勢はまさにスタートアップカルチャーへのリスペクトを感じるものであり、多くの来場者の心を掴んだ。
このような世界的イベントへの出展は2016、17年のSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)に続く挑戦だ。なぜ、パナソニックは社員の心の内に眠るアイディアを続々と引き出し、熱量を持ってカタチにしていけるのか──。
ゲームチェンジャー・カタパルトの事例から、これからの企業の役割や仕事のあり方を再考したい。
東京・浜松町のビル内にオフィスを構えるゲームチェンジャー・カタパルトを訪れた。スタートアップ企業さながらの明るくオープンなオフィスに、社内外から関係者がひっきりなしに訪れる。
パナソニック アプライアンス社が2016年、家電領域を中心とした新規事業の創出と、それらをリードする人材育成の加速を目的に本格始動させたゲームチェンジャー・カタパルト。現在は17名の社員が所属し、新規事業創出に携わるメンバーと、新事業を形にするためにサポートするメンバーに分かれる。辞令が出ている社員以外にも、積極的にその活動を支援する社員も多い。
いったいどのような社員がこの仕組みを支えているのだろうか。ゲームチェンジャー・カタパルトのメンバーとして着任して2年目、ビジネスデザイナー・濱本隆太氏に話を聞いた。
濱本氏は、2012年に発足したパナソニック若手社員を中心にした有志団体「One Panasonic」や、大企業などに所属する20〜30代の若手有志の会「ONE JAPAN」の幹事メンバーも務める。 社内のインキュベーションのサークル「BOOST」も生み出した。
「共通言語」「スタートアップマインド」醸成
━ゲームチェンジャー・カタパルトではどのような活動をしているのですか。今年で3回目になる、事業のアイデアを生み出すビジネスコンテストや、Slushなどの展示会の企画を担当しています。アイデアを持って集まってきたメンバーをメンタリングしながら、事業のブラッシュアップをサポートしています。
ビジネスコンテストでは社内から広くアイデアを募り、選出されたテーマについて夏の間にブートキャンプを行います。新規事業のスキルやマインドセットを身につける機会を設け、アイデアをブラッシュアップします。プログラム受講後はチーム間の交流も盛んになり、「共通言語」ができてきます。みんなで事業化という、同じ方向を向いていこうという雰囲気を生み出すんです。このようなスタートアップマインドの浸透が今後の会社にとってとても重要であると考えています。