経済・社会

2019.03.01 07:00

東京金融市場は柔軟な発想で「10連休」を避けよ


普段からシンガポールやシカゴで、(日本の金融機関経由ではない)直接取引をしていないような、中小以下の金融機関と個人は、10連休前にどうするか。おそらくポジションをすべて解消してリスクをとらないだろう。日本人に多いキャリートレードの人たちは、外国債や外国株のロングポジション(買い持ち)を、4月26日までに売却して円に戻すだろうから、4月22日の週は円高圧力が増すだろう。
 
東京証券取引所や、日本に取引仲介用のスーパーコンピュータがある為替電子ブローキングシステム(EBSやロイターD3000)などは、日本の金融機関、個人がお休みをとることから取引の減少で手数料収入が大きく減少するだろう。
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天皇退位の日、新天皇即位の日は休場とするとしても、金融市場はせめて4月29日、5月2日、3日は開場すべきだろう。またそれに合わせて、日銀や銀行の決済に必要なシステムは稼働することが必要になる。国民の祝日に金融機関が仕事をしてもよいのか、というご批判があろうが、国民の祝日と銀行休日が一緒である必要はない(アメリカでは州の祝日であっても金融機関が仕事をしていることもある)。例えば、昨年までのゴールデンウィークでも一部私立大学は授業を行っている。
 
銀行と決済システムさえ開いていれば、あとは、金融機関、取引所、為替電子ブローキングシステムの自由に任せればよいのかもしれない。東京証券取引所は閉まっていても、私設株式取引所が開いてもよいかもしれない。メガバンクの為替デスクは休んでいても、FX業者経由の取引ができるかもしれない。このように、柔軟な発想で、東京金融市場の自爆的に不利な状況を回避できる可能性がある。いまからでも遅くない、東京金融市場は10連休を避ける方法を考えよう。


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学特別教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002年─14年東京大学教授。近著に『公共政策入門─ミクロ経済学的アプローチ』(日本評論社)。

文=伊藤隆敏 ILLUSTRATION BY BERND SCHIFFERDECKER

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