東京金融市場は柔軟な発想で「10連休」を避けよ

2019年1月3日早朝、ドル円相場が大きく動いた。109円台で推移していたドル円は、一気に104円台まで、5円近くも急騰した。すぐに、107円台に戻したものの数日後も109円には戻っていない。一時は急激な円高に、おとそ気分も吹っ飛んだ投資家も多かったのではないか。

原因については、(1)米アップルの業績下方修正がきっかけ、(2)そもそも24時間のうちでマーケット参加者の一番少ない(つまりマーケットの厚みがない)時間帯だから、(3)AIのしわざなどと言われている。そして、いったん相場が動きはじめると、(自動的)損切りをともなって一気に相場が動いた、と説明されている。

しかし、この時間帯にマーケット参加者が少ないのは毎日のことである。ほとんどの日では、この時間帯(日本時間の午前7時─8時)は参加者が少ないため、という理由で逆にボラティリティー(変動率)は低い、とされている。なぜこの日だったのか。それは、1月3日が東京市場において、多くの機関投資家が休みだったことも災いしているのだろう。欧米では、1月1日は休みでも、1月2日には普通に仕事が始まっていた。ひょっとしたら、米アップルのニュースはきっかけではあっても、日本の休日ということが狙われたのかもしれない。

一般的に、ホーム(日本の居住者にとっては東京市場)が休場だが外国が開いている日は、急激な変動に対処することができずに、不利な価格で損切りを強制されるなど、大損をすることがある。
 
クリスマスや元旦は全世界的に休みなので、このような事態は起きにくい。日本のお盆も実は欧州ではバカンスの真っただ中なので、全世界的に休みである。外国は普通に取引をしている日で、日本が休日というのは、日本の居住者にとっては変動が起きた時に対処しにくい危ない日なのである。

今年は4月27日(土曜日)から5月6日(月曜日)までの10連休が決まった。天皇即位の慶事をお祝いするので、結構なことだが、東京金融市場からみると極めて危うい事態となる。10日間(平日ベースでは6日間)の連休では、その間にドル円や東京株式市場に大きな影響を与える情報が来ても、それをもとに取引ができない。巨大機関投資家は、為替ならばシンガポールで取引することもできるし、日経平均もシカゴの先物で取引ができる。しかし、それは東京金融市場の「空洞化」をもたらすことになるだろう。
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文=伊藤隆敏 ILLUSTRATION BY BERND SCHIFFERDECKER

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