そうした状況を改善すべく、東京都は女性ベンチャー成長促進事業「APT Women(アプト ウィメン)」を開講し、2月21日に第3期の成果発表会が行われた。
従来は「おうち起業」や「ママ起業」といった言葉に象徴される通り、女性の場合小規模に起業する傾向があったが、APT Womenでは、さらに一歩踏み出すことを前提としている。
運営事務局のデロイト トーマツ ベンチャーサポートは、主な担当を女性で構成。同社はベンチャー企業を支援する会社だが、スタートアップと投資家をつなぐイベントに現れるのはほぼ男性で占められることから、「女性起業家の数、支援する人の数を意識的にも増やし、社会貢献したい」という希望を持っている。
事務局の米国税理士の金澤靜香さん、井村仁香さん、公認会計士の吉川和美さんにこれまでのプログラムの成果を振り返ってもらいつつ、APT Womenを運営する中で見えてきた日本の女性起業家が活躍するための条件について話してもらった。
ポイント1 資金調達への意識を変える
事業を大きくするためには資金が必要である。女性は男性に比べ、小規模に起業するケースが多いが、APT Womenプログラムでは、大きなビジョンを持って事業計画を立ててもらうようにしている。
吉川:私は会計士ですので、女性起業家のみなさんにも「まずは資金調達!」とよく言うのですが、最初は「私の事業は社会貢献だから資金なんて!」と怒りだす人もいます。でも、「事業を大きくするにはお金が必要ですよね?」と、根気よく言うと意識が変わり、融資を受けて新店舗を作ったり、投資を受けたりするなど、スケールが大きくなります。VCピッチイベントで投資担当者に事業について意見をもらったり、APT Womenの同期同士で切磋琢磨したりしながら事業マインドを高め合ったりすることも有益ですね。
金澤:このプログラムは隔週で個別メンタリングを行い、各起業家に当社の専門メンターをつけ、メンタリング期間でどこまで達成するかという目標設定をします。目標設定が低い場合は、メンターがもっと大きく資金調達してスケールしよう、というところから話をします。次に市場性です。グローバル展開を目指すなら、現地のニーズや競業他社などのリサーチが重要ですし、メンタリングの際は、海外展開に必須のポイントを指摘しつつアドバイスを行います。
こうしたメンタリングの結果、すでに億単位で資金調達をする人が出てきており、それを見て「私もやってみよう!」と刺激を受ける仲間もいて、よい相乗効果を生んでいる。さらに、女性に投資しようというVCも増えつつあることも追い風となっているという。
ポイント2 家族にも、働く自分の「背中」を見せる
女性のライフイベントといえば結婚や出産。結婚すると配偶者控除などが利用できるため、扶養範囲内で働こうという内向き思考になる人もいるが、一方で家庭と事業の両立をうまくこなす女性起業家は少なくない。
井村:出産後、思うように復職ができなかったので「自分を自分で雇おう」という理念で起業する方もいました。また、ご夫婦起業家というような方もいらっしゃいますね。
吉川:出産後は、子どもの預け先に皆さん困っていらっしゃいます。仕事に打ち込みたい、立て続けに出張が決まったといったとき、ご家族が最初は協力的でも次第に嫌な顔をされると悩む方もいるようです。そのため、私たちはイベントのときは託児対応を行っています。受講者の中には、第2子妊娠中4~6か月で下の子を育てながら受講する方もいました。